2012 Fiscal Year Research-status Report
J-PARCの高計数率環境下で動作する3次元飛跡検出器の開発
Project/Area Number |
24740179
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白鳥 昂太郎 大阪大学, 核物理研究センター, 助教 (70610294)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロパターンガス検出器 / Micro Pixel Chamber / μ-PIC / Time projection chamber |
Research Abstract |
J-PARCでは大強度の中間子ビームを用いた様々な実験プログラムを計画している。必要な強度で実験を行うために従来のワイヤーを用いる検出器よりも高計数率環境下で動作するものが必要である。本研究ではマイクロパターンガス検出器に着目し、J-PARCにおける大強度ビームを用いた実験を遂行可能とする新しい測定技術として、Micro Pixel Chamber(μ-PIC)を用いた高計数率環境下で動作する3次元飛跡検出器(TPC)を開発する。 初年度の研究期間内では検出器の基幹部分であるμ-PIC本体と真空容器、TPCのドリフトゲージのデザインを行い仕様を決めた。μ-PIC本体に対してその上部に信号増幅部分に用いる2段のGEMを設置する。ガスはP10を用い、印可電圧としてμ-PICに対しては400V、2段あるGEMに対してはそれぞれ500V程度、800V程度とする。またドリフトケージには4000Vを印可する。信号の増幅量として10の4乗以上のゲインが得られると期待される結果が得られた。 実機の製作が間に合わなかったため、開発するTPCと仕様の近いμ-PICを用いたTPCを使用して、読み出しボードやVMEメモリのテストを行った。μ-PIC本体と増幅部のGEMにデザイン値と同程度の電圧を印可し、信号が読み出しボードから正しく得られている事を確認した。読み出しボードに対してはコントロール信号を変化させることで動作が正しく行われている事を確認した。また、プラスチックシンチレーティングタイミングカウンターを用い、宇宙線による信号の読み出しを行った。宇宙線の通過事象があったタイミングから約10マイクロ秒後に電離作用によって発生した電子がmu-PICに届き、信号が得られている事を確認した。メモリモジュールの読み出しも問題なく行われている。実機の開発を推進する上で重要な基礎的情報が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度に関しては実機の完成を行うことが出来ず実機と仕様の近い既存のTPCを使用した基礎的なデータを得るのみとなった。よって、次年度において早急に実機の完成を行う必要がある。一方で、読み出しボードやVMEメモリに関しては正しく動作しており、実際の使用に際して問題が無いことを確認した。 仕様の近い既存のTPCで行ったテストにより実機の開発に必要な問題点を見つけることができた。特に高計数にした場合の印可電圧の調整が必要となり、ゲインが下がる可能性がある。よって、ゲインに対して幅をより多く持たせる必要があることが分かった。また、読み出しボードのデータフォーマットが高計数率環境下で実験を行うためには冗長であり、データ転送速度を上げるためにデータ量を縮小する必要があることが分かった。これらのテストにより、実機の開発にフィードバックできる基礎的なデータを得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
早急に実機の完成を行う。デザインの大枠は出来上がっているので業者とのやり取りを行い実際の製作を行う。TPC部分についてはゲインに対して幅を持たせる必要があるが、テストを行った同型機とは異なる増幅率の高いGEMを用いることで対応する。また、読み出しボードに関しては動作自体は問題が無いが、高計数率環境下で動作させるためにはデータフォーマットを変え、全体のデータサイズを縮小する必要がある。よって、ボードに搭載されたFPGAの変更を行い、最適なデータサイズでの読み出しスキームの開発を行う計画である。 これら実機と読み出し部分の基礎的な開発を行った後に実際のビームを用いたテストを行う。高計数率環境下におけるゲインの測定を行い最適な印可電圧を決め、飛跡検出を行い位置分解能と時間分解能の達成限界を調べ最終的な性能を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
3次元飛跡検出器本体の開発1,700千円を使用する。 メモリボードの購入に800千円を使用する。
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