2013 Fiscal Year Research-status Report
爆発的元素合成過程における質量数160近傍の希土類元素ピーク形成の解明
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24740188
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡邉 寛 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員研究員 (60333316)
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Keywords | 国際共同研究 / 元素合成 / 中性子過剰核 / ベータ崩壊 / 半減期 / 核異性体 / 加速器 |
Research Abstract |
1、平成25年4月から6月にかけて、理化学研究所RIビームファクトリー(RIBF)施設において、大球形ゲルマニウム半導体検出器(EURICA)を用いた崩壊核分光実験を行った。一連の実験では、鉄(原子番号26)からネオジウム(原子番号60)までの広範囲に亘る中性子過剰核の研究を行い、半減期や崩壊経路を決定することに成功した。これら中性子過剰核の構造に関する情報は、速い中性子捕獲による爆発的元素合成過程(r過程)の天体シミュレーションを構築する上で、重要な基礎となるものである。 2、同実験において、1ナノ秒程度の励起状態の寿命を測定するため、速い時間応答を備えた臭化ランタン検出器とプラスチックシンチレーション検出器を新たに導入した。臭化ランタン検出器は、英国サリー大学とブライトン大学が開発したものを使用した。一方、プラスチック検出器の開発と臭化ランタン検出器のサポート架台の製作に当該科研費を使用した。励起状態の寿命測定により、中性子過剰核における核変形の進化や、配位混合および変形共存に関する理解が進むと期待される。 3、前年度(平成24年)に行ったEURICA実験のデータを解析し、パラジウム128に核異性体を発見した。この核異性体は、陽子もしくは中性子数が魔法数の原子核に現れる特徴的な状態を示しており、この中性子過剰な原子核領域で中性子の数82が魔法数としての性質を維持していることを証明した。研究成果を学術論文にまとめて誌上発表するとともに、プレスリリースを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の実施状況報告書に記載した時点では、平成25年度中に本研究課題である質量数160-170近傍の中性子過剰希土類原子核のベータ崩壊核分光実験を実施する予定であったが、残念ながらビームタイムが割り当てられなかった。しかしながら、実験装置等はこれまでの先行研究で使用した物がそのまま使用できるため、準備は既に完了している。また、ナノ秒単位の励起状態の寿命を測定するための臭化ランタンおよびプラスチックシンチレーション検出器の開発も完了しており、平成25年4-6月の実験で動作確認をしている。本研究課題の実験は、平成26年の秋には実施される予定であり、先行研究で得られた結果と合わせて、r過程元素合成過程の包括的理解が進むと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24、25年度に行った一連のEURICA実験で得たデータを解析し、結果を学術論文にまとめるとともに国際会議等で発表する。同時に、平成26年秋に実施を予定している実験の準備を進める。前年度までに基本的な検出器の開発は完了しているため、主に実験装置の整備や校正を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に本研究課題の実験を理研RIBF施設で行い、そこで得た実験データを解析するとともに国際会議等で発表する予定であった。しかしながら、実験施設の都合により計画が変更され、平成26年度に実験が行われることになったため、物品費や旅費として見込んでいた分に未使用額が生じた。 上の理由により、実験データの解析や打ち合わせ、実験結果の成果発表、実験装置の整備および増強は平成26年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる予定である。
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