2012 Fiscal Year Research-status Report
チタン酸化物とのヘテロ接合を用いた銅酸化物の光キャリア注入電子相制御の研究
Project/Area Number |
24740196
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢田 祐之 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (60573144)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光誘起相転移 / テラヘルツ分光 / 銅酸化物 / ヘテロ接合 |
Research Abstract |
本研究では、チタン酸化物と銅酸化物のヘテロ接合を利用した光キャリア注入によって、新規な光誘起絶縁体―金属転移、金属―超伝導転移の実現と光誘起相の電子構造の解明を目指している。24年度においては、実験に用いる4種の試料をパルスレーザー堆積法によって作成した。それぞれ、銅酸化物単膜試料(La1-xSrxCuO4 (LSCO): x< 0.01(ノンドープ試料), x=0.055, 0.08, 0.125の4種のドーピング濃度)、銅酸化物とチタン酸化物(TiO2)とのヘテロ接合試料(単膜の場合と対応した4種のドーピング濃度)、チタン酸化物単膜試料である。此等を可視・赤外領域における吸収スペクトル測定によって評価し、試料が正しく作成されていることを確認した。さらに銅酸化物単膜試料についてはテラヘルツ時間領域分光を行い、テラヘルツ領域の複素光学伝導度を評価した。ただし、x=0.08の試料は極低温において超電導を示す濃度であるが、熱伝導型のクライオスタットを用いる範囲では、テラヘルツ分光においては超電導相の確認が困難であることが判明した。この解決は今後の課題である。さらに銅酸化物単膜試料およびチタン酸化物単膜試料に対して光ポンプ・テラヘルツプローブ分光を適用した。銅酸化物においては、光励起によって瞬時に超電導相が破壊されることを確認し、その回復に数ps要することが分かった。チタン酸化物においては光キャリアによる過渡的なDrude的な応答がテラヘルツ領域において検出された。この結果を研究代表者の所属する研究室で既に行われていた光ポンプ・赤外プローブ分光の結果と比較することで、TiO2におけるDrude的な応答は、フォノン散乱の影響を強く受けていることを見出した。この結果は学会で発表し、論文を執筆中である。また構築した測定系の一部を用いた結果も論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の計画は大きく分けて下記の5項目であった。それらは、(1)試料作製、(2)可視・赤外領域における吸収スペクトル測定、(3)テラヘルツ時間領域分光による超電導相の確認、(4) LSCO単膜のポンプ・プローブ分光、(5)TiO2単膜のポンプ・プローブ分光、である。此等は(3)を除いてすべて達成されたため、上記の評価を与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画どおり25年度は(6) LCO/TiO2およびLSCO/TiO2ヘテロ接合薄膜のポンプ・プローブ分光を行う。ただし前項で上げた:(3)テラヘルツ時間領域分光による超電導相の確認、においては、x=0.08の試料は極低温において超電導を示す濃度であるが、熱伝導型のクライオスタットを用いる範囲では、テラヘルツ分光においては超電導相の確認が困難であることが判明した。この原因として、熱伝導型タイプでは、試料の冷えにむらが生じていたことが考えられる。そこで、冷媒を直接試料に接触させるタイプのクライオスタットを新たに測定系に導入し、超電導相のテラヘルツ光を用いた検出を試みる。これにより超電導を示さないx=0.055のドープ濃度のヘテロ試料に対して光ホール注入を行うことにより生じた超電導相の検出に備える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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