2013 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電性半導体の分極電場に駆動された光キャリアダイナミクスと光起電力効果の解明
Project/Area Number |
24740202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 泰裕 京都大学, 化学研究所, 准教授 (50532636)
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Keywords | 時間分解分光 / 強誘電体 |
Research Abstract |
本研究は、強誘電性と半導体性を併せ持つ「強誘電性半導体」の光電特性を解明することが目的である。強誘電体は外部電場がない場合でもマクロな分極を有しており、分極電場によって光キャリアが分離・輸送されることで光起電力が生じる。さらに、強誘電ナノドメイン構造を制御することで、バンドギャップエネルギーを超える巨大光起電力も得られるなど、既存の光電変換材料にはない全く新しい物性を示す。しかしながら、分極電場に駆動される光キャリアダイナミクスやその強誘電ドメイン構造による影響はほとんど研究されていなかった。本研究では時空間分解レーザー分光を用いて強誘電性半導体の光キャリアダイナミクスを明らかにし、光起電力効果のメカニズム解明と制御方法の確立を目指し、研究を進めた。 本年度は、過渡吸収測定、時間分解光伝導測定により異なる基板(SrTiO3, DyScO3)上に作製した強誘電体BiFeO3薄膜の光キャリア再結合・緩和ダイナミクスの全体像を明らかにした。白色過渡吸収分光から、光励起直後からバンドギャップエネルギー近くに過渡吸収帯が現れ、これは光励起された電子がより高い伝導帯に励起されることによって生じる。この吸収帯の時間変化をプローブすることで、光励起電子の寿命を決定することができた。BiFeO3薄膜は数ピコ秒の速い緩和過程に加えて、マイクロ秒に及ぶ長寿命成分があることが分かった。この結果を踏まえ、BiFeO3薄膜における光起電力効果が、トラップに捕獲された光キャリアが再励起されることによって実効的に長寿命となることと関係していることを明らかにした。本研究の成果を論文に纏め、論文誌に掲載された他、国際・国内学会においても本研究成果の発表を行った。
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