2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24740217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新見 康洋 東京大学, 物性研究所, 助教 (00574617)
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Keywords | スピントロニクス / スピン流 / スピンホール効果 / 弱反局在 / メソスコピック系 / 強磁性体 / 超伝導体 |
Research Abstract |
スピンホール効果は、電流からスピン流、もしくはその逆変換を可能にする手段として今日のスピントロニクス研究で幅広く利用されている。エネルギー損失を伴わないスピン流のデバイスへの応用という観点からも、スピン流-電流変換効率の指標となるスピンホール角をできるだけ大きくすることが、スピントロニクス分野で重要な課題の一つである。昨年度の研究では、スピン軌道相互作用の弱い銅にビスマスを0.5%添加した銅-ビスマス合金を用い、スピン吸収法と呼ばれる手法でスピンホール角を算出したところ、-24%まで増強されることが分かった。実際にスピンホール角を定量的に算出するためには、その物質のスピン拡散長を正しく算出する必要があり、特にスピン軌道相互作用の強い物質のスピン拡散長に関しては今日に至るまで激しい論争が続いているため、この問題を解決することは急務であった。そこで昨年度から、スピン拡散長を算出する新たな手法として弱反局在効果に着目し、実際に銀や銅、白金などではこれまでの強磁性体を用いて得られる値と一致することを示した。今年度は、この原理を単体金属だけでなく、銅-ビスマス合金に応用し、実際にスピン拡散長が2つの手法で一致することを示した(Y. Niimi et al., Phys. Rev. B 89, 054401 (2014).)。さらに、銅-ビスマス合金のスピンホール角も、過去の異常ホール効果の測定(A. Fert et al., J. Magn. Magn. Mater. 24, 231 (1981).)と同じ手法で算出し、この測定からもスピンホール角が-23%程度であることを確かめている。さらに今年度は、超伝導体Nbを用いたスピン輸送測定も行い、Nbの超伝導体転移温度以下では、スピンの緩和時間が実効的に長くなることを初めて実験的に明らかにした(T. Wakamura et al., Phys. Rev. Lett. 112, 036602 (2014).)。
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