2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24740221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宇田川 将文 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80431790)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | パイロクロア格子 / スピンアイス / 分数量子ホール効果 / Weyl半金属 / カイラリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はcomplete graphの一つの種類であるパイロクロア格子上における電子系についての解析を行ない、大きく分けて、二つの成果を挙げることに成功した。まずは近年多くの特異な輸送特性が観測され,注目を集めているパイロクロア化合物,Pr2Ir2O7を対象として,パイロクロア格子上J1-J2-J3スピンアイス模型の非平衡ダイナミクスを調べる研究を行った。その結果,この系ではモノポールリングというカイラル自由度を備えた多量体励起が低エネルギーで安定化し,磁場クエンチにより得られる非平衡定常状態を特徴付ける可能性を見出した。異なるカイラリティーをもつモノポールリングの密度のインバランスは,Pr2Ir2O7で観測された自発ホール効果の起源の候補として考えられ,興味深い。また,別種のパイロクロア酸化物, Ln2Ir2O7 (Ln=希土類元素)を念頭に,層状パイロクロア系における短距離相互作用模型の研究を行った。この模型は相互作用を仮定しない場合には,Weyl半金属と呼ばれるトポロジカルに保護されたギャップレス状態が安定となり,また付随して特異な表面状態が現れる。本研究ではWeyl半金属由来の表面状態に相互作用を印加した結果,可換及び非可換の分数量子ホール状態が安定化する結果を見出した。本結果はこれまで全く別々の文脈で捉えられて来た分数量子ホール状態とWeyl半金属を統一した見地から見直す意義の高い成果であり,またWeyl半金属由来の表面状態に特有の大きなChern数が分数量子ホール状態の特性に与える影響を明らかにしたという意味でも意義深い。
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Research Products
(20 results)