2012 Fiscal Year Research-status Report
電子輸送特性と結晶構造の低温高圧下同時測定によるビスマス系化合物の超伝導の研究
Project/Area Number |
24740229
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大村 彩子 新潟大学, 研究推進機構 超域学術院, 助教 (60425569)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | トポロジカル絶縁体 / 高圧物性 / 超伝導 / 構造相転移 |
Research Abstract |
今年度は、輸送特性と結晶構造の同時その場観察を目指した実験環境の整備と並行して、ビスマス(Bi)系トポロジカル絶縁体化合物Bi2Te2Seおよび超伝導体Cu0.25Bi2(TexSe1-x)3について圧力誘起超伝導転移・構造相転移を探索するために低温高圧下電気抵抗測定および室温高圧下放射光X線回折を行った。 Bi2Te2Seでは、圧力誘起超伝導が8万気圧以上で発現すること、さらに室温では9万気圧付近から構造相転移が始まり、これにともなって抵抗率が大きく減少することを明らかにした。8万気圧で観測した超伝導は、構造変化過程との比較から高圧結晶相ではなくトポロジカル絶縁体相(常圧結晶相)に起因する可能性がある。この点は、本研究で整備中の同時その場観察を次年度以降に行う予定である。また、我々はこれまでBi2Te2Seと同じ対称性(結晶構造)をもつBi2Te3の高圧物性研究を行ってきた。本研究におけるBi2Te2Seの結果と比較することで、Bi2Te3型Bi系トポロジカル絶縁体では構造変化過程および超伝導特性と積層構造との関係を評価できるようになった。 Cu0.25Bi2(TexSe1-x)3は、トポロジカル超伝導体の有力候補であるCuyBi2Se3の結晶構造においてSeの一部をTe置換した物質である。x=0.01の組成では常圧でTc=3.2 K付近から超伝導が確認されている。超伝導転移は、すでに報告のあるCuyBi2Se3と同様に圧力に対して抑制される傾向があり、本物質では1万気圧付近で消失することが明らかとなった。室温での抵抗率はおよそ4万気圧で極大を示し、この圧力の前後で抵抗率の温度依存性は金属的なふるまいから半導体的、さらに再び金属的と著しく変化する。この間、結晶構造の対称性は変化しておらず、電子転移の可能性から考察を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はダイヤモンドアンビルセルによる低温高圧力下の電子輸送特性とX線回折の同時測定法の確立を目指している。今年度はまず従来型の物性測定用ダイヤモンドアンビルセルに対応した実験環境を整備した。本研究経費により物性測定用ダイヤモンドアンビルセル専用の加圧装置を購入し、既存の実体顕微鏡にあわせて加圧装置用XYステージを準備した。また、ダイヤモンドアンビルセル特有の数10-数100μmの微小試料を扱うために必須となるマイクロマニュピレータと関連機器を購入した。前述の専用加圧装置の納入遅れやダイヤモンドアンビルの破損により若干整備までに時間を要したが、当該年度内に絶縁被膜ガスケット作製用の環境整備とガスケット開発の着手ができたためにおおむね順調に進んでいると考えられる。 また、研究実績の概要に記したように、作業環境の整備と並行してビスマス系トポロジカル絶縁体の高圧物性研究を進め、国内の学会で発表するに値する成果を得ることができた。とくに、Bi2Te3型トポロジカル絶縁体についてはこれまで得てきたデータとあわせることによって系統的な考察ができるようになった。この点もまた本研究の主な目的のひとつであり、順調に研究成果が得られていると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、絶縁被膜ガスケットの開発を引き続き行い、実際に加圧して目標値20-30GPaまでの圧力発生を試みる。絶縁被膜用の絶縁パウダーと接着用樹脂の混合物(絶縁層)は、申請時には金属ガスケットの表面に塗布する方式で考えていた。しかし、試料加圧時の金属ガスケットの変形による影響、また絶縁層自身の変形も大きい。そこで、金属ガスケットの表面に塗布した後に、さらにパウダーが高密度に充填されるようにダイヤモンドアンビルで予め押し固める方法を試みる。ダイヤモンドアンビルセルを取り扱う際、金属ガスケットの変形を最小限にするために目標圧力付近まで予め押し固めるが、これと同じ考え方である。 また、ガスケット開発はダイヤモンドの破損等による遅れがやむをえず生じる可能性があるため、今年度と同様にビスマス(Bi)系トポロジカル絶縁体の高圧物性研究を進展させる。Bi系トポロジカル絶縁体の高圧物性研究では、絶縁被膜ガスケットによる圧力発生が安定した後に、まずは試験的に従来型物性測定用ダイヤモンドアンビルセルでBi2Te2Seの低温高圧力下の電気抵抗測定を行う。その後、Cu-Be製の小型セルもしくはガス駆動型メンブレンダイヤモンドアンビルセルを導入して、本研究の主目的である低温高圧力下の電気抵抗と結晶構造の同時測定を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|