2014 Fiscal Year Annual Research Report
電荷・スピンストライプ秩序相を有する高温超伝導体の電子構造
Project/Area Number |
24740234
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
田中 清尚 分子科学研究所, 極端紫外光研究施設, 准教授 (60511003)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / ストライプ秩序 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成25年度に購入した光伝導アンテナにより反射型テラヘルツ時間領域分光装置の測定精度が大きく向上し、超伝導転移に伴う反射スペクトルの変化の詳細まで観測できるようになった。平成26年度はさらに光学系の調整を行うことで、最終的に光学伝導度を導出・議論することができるようになった。この装置を用いて高温超伝導体(La,Sr)2CuO4の測定を再び行い、超伝導転移だけではなく、超伝導転移温度よりもわずかに高温から超伝導と同じような振る舞いを光学伝導度の実部、光学伝導度の虚部、反射率の位相成分のそれぞれにおいて観測した。これは超伝導ゆらぎを観測することに成功したと考えられる。この超伝導ゆらぎのキャリア濃度依存性を測定することで、ストライプ秩序が存在する1/8近傍のキャリア濃度においては、超伝導転移温度だけでなく、超伝導ゆらぎも抑制されていることが明らかとなった。これはストライプ秩序が超伝導だけでなく、そのゆらぎ成分も抑制していることを表している。今回、光学伝導度の実部、虚部、反射率の位相成分という独立した3つの観測結果が同じ振る舞いを示したことは、装置の精度が十分に向上したことを証明するものである。ここまで精度の良い反射型テラヘルツ時間領域分光装置は世界にも他にはない。 また放射光施設UVSORにおいて(La,Nd,Sr)2CuO4の角度分解光電子分光測定を行った。実験条件を細かく変化させることで、運動量空間でノードと呼ばれる領域においてスペクトルがピークを示す最適な条件を発見し、測定を行った。その結果ストライプ秩序の発達とともにノード近傍のち超伝導ギャップが抑制される様子を観測することに成功した。 反射型テラヘルツ時間領域分光、角度分解光電子分光の結果により、ストライプ秩序により超伝導状態、特に超伝導ギャップ、超伝導ゆらぎが直接抑制されていることが明らかとなった。
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