2012 Fiscal Year Research-status Report
トポロジカル超伝導体CuxBi2Se3および新規物質の超伝導ギャップ対称性の解明
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24740237
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐々木 聡 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00540105)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トポロジカル超伝導体 / トポロジカル結晶絶縁体 |
Research Abstract |
初年度は、CuxBi2Se3の超伝導ペアリング対称性を決定する第一歩として、バルク結晶の劈開面にフォトリソグラフィーによってPbやNb、Snなど既知のs波超伝導体によるジョセフソン接合を形成し、ジョセフソン電流の臨界電流に異方性が生じるかどうかの検討を行った。しかし、CuxBi2Se3の不均一性が問題となってジョセフソン接合が超伝導CuxBi2Se3上に正しく形成される確率が低く、リソグラフィー形成工程の難易度に対して成功率が上がらなかった。まずは試料作製上の幾つかのパラメタ―の最適化によるCuxBi2Se3の超伝導体積分率を上げることが第一であるという結論に至った。 CuxBi2Se3は本来的に不均一超伝導体である可能性から、CuxBi2Se3の超伝導性の改善と同時進行で新しいトポロジカル超伝導体候補物質の探索を強力に進めた。幸運なことに昨年新しく発見されたトポロジカル絶縁体の仲間であるトポロジカル結晶絶縁体SnTeにInをドープすることで超伝導を発現するSn1-xInxTeがトポロジカル超伝導体候補物質であることをポイントコンタクト分光法によって世界でいち早く示すことに成功した。平成25年3月に開催されたアメリカ物理学会では、この物質が複数の研究グループによって早くも取り上げられ、世界的に重要な研究テーマになっている。 Sn1-xInxTeは、結晶の対称性から理論的にCuxBi2Se3と同じ超伝導ペアリング対称性を持つとされている。また100%の超伝導体積分率を示し、トポロジカル超伝導体の超伝導特性の研究に適した物質である。初年度の新規なトポロジカル超伝導体候補物質Sn1-xInxTeの発見は、次年度以降にトポロジカル超伝導体の超伝導ペアリング対称性を決定する実験を加速させることが出来る重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の究極的目的はトポロジカル超伝導体の超伝導ギャップ対称性を決定することである。CuxBi2Se3は不均一超伝導体であり、超伝導体積分率が上がらないことからCuxBi2Se3による超伝導ギャップ対称性を決定する研究は遅れている。しかし、幸運なことにSn1-xInxTeが新規なトポロジカル超伝導体候補物質であることがわかり、また理論的にはこの超伝導体の超伝導ギャップ関数がCuxBi2Se3のものと同じであることが予言されているため、Sn1-xInxTeの超伝導ギャップ対称性を決定することで、本研究課題の目的が達成されるからである。Sn1-xInxTeは超伝導特性がシンプルであり、かつ原子レベルで平坦なファセット面を有する結晶が既に得られている。また、準備実験としてSn1-xInxTe上にフォトリソグラフィーによるAl2O3によるトンネル接合を形成し、トンネル分光にも成功している。したがって、本課題研究は研究目的に向かって概ね順調に進展していると評価出来るからである。
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Strategy for Future Research Activity |
Sn1-xInxTeのファセット面にフォトリソグラフィーによって形成するトンネル接合形成技術を応用し、ファセット面へのジョセフソン接合形成を進める。その結果から得られる知見をもとに、計画通りに並列ジョセフソン接合によるSQUIDを作製し、超伝導位相に敏感な実験を行う。また、新規なトポロジカル超伝導体候補物質の探索も引き続き行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
作製したジョセフソン接合やSQUIDを測定するため、低温測定装置関連を充実させる計画である。
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