2012 Fiscal Year Research-status Report
重い電子系イットリウム化合物における量子臨界現象と結晶構造
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24740243
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
冨田 崇弘 日本大学, 文理学部, 助教 (20437502)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子臨界現象 / イットリウム化合物 / X線回折 / 非フェルミ液体 |
Research Abstract |
重い電子系Yb化合物の中で、唯一超伝導を示すβ-YbAlB4は、零磁場絶対零度で量子臨界点の近傍に位置していると思われる。このため、量子臨界点を圧力や化学的圧力により制御することで、「量子臨界状態がどのように変化するか」、またその制御により「新規な量子状態が現れることはないか」に注目が集まっている。 今回、純良な単結晶試料β-YbAlB4を使用して、量子臨界現象の研究を行う。特に、量子臨界点・超伝導近傍の相図、圧力誘起相転移の基底状態、高圧下での結晶構造を明らかにすることで、Yb系でしか現れない「量子臨界点での異方的超伝導」、「安定な非フェルミ液体状態」、「30 Kを超える高い圧力誘起相転移の磁性」という新奇な量子相の発生機構に対する統一的理解を目指すとともに、その結晶構造から超伝導機構を電子状態から明らかにする事が本研究の目的である。。本研究遂行のため、圧力中の磁化・電気抵抗から、超伝導転移近傍の圧力相図と圧力誘起相転移の基底状態を、超高圧発生装置を用いたX線測定によるリートベルト解析から体積膨張率と結晶構造を決定し、価数揺動状態に伴う電子状態の変化を明らかする。また、化学的圧力をかけたFeドープ試料を用いることで、外的圧力との比較を行う。更に、他のCe/Yb/U系重い電子系超伝導物質と比べ価数揺動状態がいかに量子臨界に影響を与えているかを調べるとともに、本物質の新規な量子臨界現象の解明を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピストンシリンダー型圧力セルを用い3 GPaの高圧下で、希釈冷凍機を用いて低温40 mKまで電気抵抗測定を行った。この結果、常圧から高圧にかけて正確な圧力相図を高温から低温40mKまで決定した。さらにこの電気抵抗の温度の冪が1.5という非フェルミ液体状態が幅広い範囲で観測できた。この幅広い非フェルミ液体状態は、常圧で確認されている量子臨界点は、実際、点ではなく、相として存在している可能性があり、新たな量子臨界相が出現示唆していると考えられる。また、更に加圧を行うことで、1GPa以上にて、非フェルミ液体からフェルミ液体状態へのクロスオーバーが出現した。今までYb系化合物では加圧により磁性が現れるのが一般的だが、このようなフェルミ液体が現れたことはない。さらに高圧領域において、臨界圧力(2.5 GPa)と考えられる電気抵抗の急激な異常を確認した。この異常は、高圧下で第二の量子臨界点が現れた可能性がある。臨界圧力以上で電気抵抗の温度係数Aの磁場依存性を見積もることにより、発散傾向を確認した。この温度係数Aの発散は、YbRh2Si2の磁気特性と同様な変化を示しているため、本研究で得られた異常も磁気転移と考えられる。また、この臨界圧力は、キュービックアンビルセルから得られた高圧下の抵抗異常と対応している。更なる高圧下の電気抵抗測定を行うため、ダイヤモンドアンビルセルを用いて30 GPaまで測定したが、この臨界圧力以上において抵抗異常は確認できなかった。このように、本年度は、さまざまな実験結果から、多くの高圧特性を確認することできており、研究はおおむね順調に遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.圧力臨界2.5GPaで現れる臨界異常の確認を行うために、低温高圧下での電気抵抗測定を行う。特に、3GPa以上の高圧実験を連続的に行うために、10GPa級の高圧電気抵抗実験が行えるブリッジマンアンビル装置の開発を遂行する。 2.ダイヤモンドアンビル圧力セルを用いた低温X線測定(300 K~4 K)からリートベルト解析を行い、圧力30 GPaまでの圧力下の格子定数の変化並びに原子位置に関する情報を引き出す。当初、X線実験は放射光にて行う予定であったが、研究室にて低温X線測定が行えるようになったため、日本大学の広領域研究センターにてX線測定を行い、特に以下の事を確認する。 (1)本物質はボロン層が非常に堅いため、c軸方向がより圧縮率が高いと思われる。これはc軸方向に並んだ1次元Yb原子の変化に大きな影響を与える。このため、格子定数を求め、それを確認する。 (2)理論面でもバンド計算等を行うために原子位置の特定が急がれており、本実験を通してミクロな電子状態の変化を明らかにする。これは、リートベルト解析から実験をし確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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