2013 Fiscal Year Research-status Report
強相関電子系の秩序相における新奇な非平衡現象の理論
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24740244
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
田中 康寛 中央大学, 理工学部, 助教 (50541801)
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Keywords | 非平衡状態 / 電荷秩序 / 電流電圧特性 / 負性微分抵抗 |
Research Abstract |
二次元有機導体β-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6について、その電荷秩序転移のメカニズムと非線形伝導について調べた。この物質は低温で構造歪みを伴うチェッカーボード型の電荷秩序転移を示すが、この相転移は電子間のクーロン斥力のみでは説明が困難であることが過去の研究で指摘されている。本研究では、クーロン斥力とともに電子格子相互作用まで考慮したモデルに基づき、平均場近似の範囲でチェッカーボード型電荷秩序が生じる可能性を議論した。さらに、電荷秩序状態に電圧をかけた際に現れる非線形伝導と電荷秩序の融解について、非平衡グリーン関数法を用いて計算を行った。その結果、電荷秩序と格子歪みが部分的に残った伝導状態が生じる可能性があることが分かった。この状態は平衡状態では最安定にはならず、非平衡状態でのみ現れる新しい状態であることが示唆される。本年度では特に、電圧下での状態密度を計算して、実際に伝導状態においては電荷秩序が残っているにも関わらずギャップが消失していることを確かめた。また、計算では電圧が大きい領域で電流が減少する傾向(負性微分抵抗)が見られたが、これは考える系のバンド幅が有限であることに起因しており、電場勾配のある系で平均場近似を行う際に起こる結果であることが分かった。このことをより具体的に示すため、一次元のバンド絶縁体で電流電圧特性を計算し、電極のバンド幅や電場勾配など様々な条件のもとで負性微分抵抗が生じる条件を調べた。その結果から、相互作用のない系や、電子間相互作用を平均場近似で扱った場合に現れる電流電圧特性の形を一般的な立場から理解することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度から取り組んでいるβ-(meso-DMBEDT-TTF)2PF6の研究を論文としてまとめる段階でいくつかの追加計算を行った。その過程で当初の予定にはなかった別の課題にも取り組んだが、その結果は研究の目的を達成する上で重要な成果になったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
非線形伝導が観測されているΘ型有機導体では、様々な電荷秩序が拮抗していることが実験で示唆されており、まずは平衡状態でこのような状態が再現可能かを調べることが重要になると思われる。この課題に対し、強相関効果を取り込むことが可能な変分モンテカルロ法を用いて研究を行う。また、非平衡状態の理論として、平均場近似を越えた揺らぎの効果を取り込む計算手法の開発を行う。具体的には、平衡系でよく用いられる変分モンテカルロ法を非平衡状態に拡張する可能性について探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
助成を受け初めて二年度目で異動となり、受け持つ授業ができたことにより学会等への参加回数が減少したため。 次年度は国際会議に参加予定であり、また国内学会、研究会への参加が今年度よりは増える見込みであるので、旅費として使用する予定である。また、成果発表のための環境整備として各種のソフトウェアも購入予定である。
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Research Products
(5 results)