2014 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用と擬スピンのゆらぎがもたらす新たな超伝導の理論的研究
Project/Area Number |
24740251
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡部 洋 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 協力研究員 (50571238)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピン軌道相互作用 / イリジウム酸化物 / 強相関電子系 / 異方的超伝導 / 乱雑位相近似 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成24、25年度の研究で、イリジウム酸化物における超伝導実現の可能性、さらには絶縁体状態の詳細な性質を議論し、当初予定していた以上の成果を挙げることが出来た。最終年度となった平成26年度は、共同研究者と共にこれまでとは異なる理論手法によるアプローチを試みた。具体的には弱相関領域で有効である乱雑位相近似(RPA)を用い、Sr_{2}IrO_{4}に電子・ホールをドープした際の磁性と超伝導について詳細な議論を行った。RPAではモット絶縁体を扱えないという困難があるものの、ドープした金属状態に対してはフェルミ面の詳細な情報を取り入れることが出来るという利点がある。 まずはRPAを用いてドープ量とスピン軌道相互作用をパラメータとした相図を得た。その結果、フェルミ面が一枚になる領域では、前年度までに得られたのと同様のd_{x2-y2}-波擬スピン一重項超伝導が安定化する一方、二枚になる領域では新たにs_{+-}-波擬スピン一重項超伝導が安定化することが分かった。後者は異なるバンド間の散乱を用いた超伝導であり、近年注目を集めている鉄系超伝導との関連も深いと考えられる。また、両者を実験的に区別する方法の一つとして、核磁気共鳴(NMR)の実験で得られるナイトシフトを計算した。強いスピン軌道相互作用の影響で軌道成分の寄与が大きくなるため、従来の3d電子系のナイトシフトとは大きく異なる振る舞いを示すことが分かった。この成果はイリジウム酸化物に限らず多くの多軌道強相関電子系に対して有効であると考えられる。 また、これまでに得られた成果を広く普及させるための活動にも積極的に取り組んだ。国内外での学会や研究会での発表に加え、非専門家にも分かりやすい内容の和文記事を日本物理学会誌に掲載し、多くの反響を頂いた。
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Research Products
(5 results)