2012 Fiscal Year Research-status Report
量子ダイナミクスの加速の研究:量子制御の高速化に向けて
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24740254
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
増田 俊平 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90546897)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / Los Alamos National Lab. |
Research Abstract |
ボーズ-アインシュタイン凝縮体(BEC)の理想的な高速制御に関する研究が S. Masuda, Phys. Rev. A 86 063624 (2012) に掲載された。ここでは波動関数が球対称性をもつ場合の加速外場を解析的に導出している。また早送り理論の多体系への拡張を特殊な場合に行っている。これによりBECのより複雑な制御や実験が可能になる。 国際会議 “Shortcuts to Adiabaticity” July 16-20 2012, Bilbao Spain において量子多体系の高速制御とBECの理想的な制御についてポスター発表を行った。他の研究者の発表から量子制御について有益な情報が得られた。この会議でLos Alamos National Lab.のA. Campo 氏とoptical lattice potential へBEC を閉じ込める高速制御についての共同研究を始めることが出来た。現在論文を作成中である。また共同研究者の中村勝弘教授と熱力学と量子早送り理論の関係について議論をおこなった。9月にはシャンハイ大学のChen教授の研究室を訪問しセミナーを行った。Chen教授と議論を深め、ランダムポテンシャルのBECへの影響を打ち消し、擾乱のない制御を行う研究を推進することができた。この研究により量子状態をより長いあいだ保つことができるようになると期待される。その研究結果はArXiv:1301.7135(2012)にまとめられており、現在審査中である。 2013 年2月のQIT27(慶應義塾大学)ではトポロジカル-チャージポンピングの高速化を我々の理論を用いて行うアイデアを得ることができた。2013 年3月のGCOE symposium(東北大)ではランダムポテンシャル中のBEC の理想的な制御に関する口頭発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、量子ダイナミクス加速の理論の多体系への加速を研究していたが、目標通り理論の拡張を行うことができた。研究内容は既にS. Masuda, Phys. Rev. A 86 063624 (2012) に発表されている。その論文の中では具体例として同種粒子の高速輸送や基底状態にあるBECの高速制御を挙げている。特にBECの制御に関しては様々な実験への応用が期待される。 もう一つの研究目的として高速量子制御を用いたノイズによる擾乱の低減を掲げていた。我々はポテンシャルにトラップされたBECが、ランダムポテンシャルにさらされている状況を考えた。早送り理論を用いて導出された加速外場により周期的にBECを前後に輸送し、ランダムポテンシャルの影響をキャンセルすることができることを示した。ランダムポテンシャルが空間的に広がっているにも関わらず、BECの波動関数は乱されずもとの形を保つ。この研究はArXiv:1301.7135(2012)にまとめられ、現在審査中である。 よって当初の計画通りに研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
分子の化学反応は少数準位系として量子力学で表されることがある。これまで多準位系の量子断熱過程の加速には様々な方法が提案されてきた。申請者はそれらの方法を用いてある分子から別の分子への化学反応を効率よく行うための外場の導出を行う。またこれらのシステムは数値モデルの上では相互作用する複数のスピンと同等である。よってその理論はスピン系のダイナミクスの制御にも応用可能であることが期待される。多体系の場合、実験条件を満たす外場の導出が容易ではない。当研究費によって購入したコンピュータによってQuantum Optimal Control Theoryを用いた数値計算を行い、最も制御に適した外場を探索する。 申請者は前年度、ランダムポテンシャルの影響から量子状態を保護する方法を提案した。さらに研究を進めることで熱浴からの相互作用の影響を軽減することができるか調べる。そのためにはこれまでの理論を密度行列を用いたものに拡張する必要がある。また外系との相互作用をモデル化するときにどのようなモデルが適当かを突き止める必要があると考える。一方原子の衝突によるBECの蒸発をモデル化する方法として虚数ポテンシャルを用いることを計画している。 近年トポロジカル量子状態は大きな注目を集めている研究分野である。その一例としてCharge pumpやSpin pumpがある。しかしこれらの議論には系のパラメータを十分ゆっくり動かした場合を考える場合が普通である。申請者は量子断熱過程の加速の理論を用いることで、この断熱過程の結果を瞬時に得ることが可能か明らかにすることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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