2012 Fiscal Year Research-status Report
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24740256
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
北畑 裕之 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378532)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形非平衡物理学 / アクティブマター / パターン形成 / 表面張力 / マランゴニ効果 / 対流現象 / 散逸構造 / 分岐 |
Research Abstract |
本研究においては、界面張力によって駆動される自発的運動と変形の関係について一般的な知見を得ることを目的として研究を進めている。自発運動する素子として液滴を用いると、運動と変形が相互作用するが、変形せず形状が決まっている粒子を用いると、変形(形状)のみが運動に影響する。今年度は液滴の変形は考えず、液滴表面での界面張力の勾配が引き起こす運動や、与えられた形状に依存した自発運動粒子の運動を調べた。具体的には、以下の2つのテーマを行った。 (I)樟脳粒を水面に浮かべると、樟脳粒から樟脳分子が水面に展開し、界面張力を下げ、界面張力変化がMarangoni対流を引き起こし、また樟脳の粒にかかる力のバランスを崩すため樟脳の粒自体の運動も引き起こすことが知られている。粒子の形状が運動に及ぼす影響を議論するため、変形のもっとも単純なモードでかつ並進運動に寄与する異方性をもたない楕円形状の樟脳粒の運動について実験および解析を行った。解析に関しては、反応拡散系をベースとし、解を摂動的に展開することによって、分岐解析を行った。 (II)Belousov-Zhaotinsky (BZ)反応液滴運動の光による制御を目指して実験を行った。BZ反応は反応拡散系のモデル実験系としてよく用いられる系であり、その反応溶液中で、化学波と呼ばれる非線形進行波が自発的に発生することが知られている。これまでに申請者は、BZ反応の液滴系において、化学波によるパターン形成と結合した液滴の運動を実験的に明らかにしてきた。この現象に関して液滴が完全な球形であると仮定すると流体力学を用いた議論からその運動速度を計算できる。そこで、光感受性の触媒であるRu触媒を用いてBZ反応を起こすことにより液滴内部のパターンを制御することができた。また、Stokes方程式に基づいたモデルを用いた数値計算により、実験で観測できる運動を再現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していた二つのテーマ、すなわち、(I)水・樟脳系における、樟脳粒の粒子形状が運動に及ぼす公開について、(II)光BZ反応液滴の液滴内部の化学反応波と結合した運動の光による制御について、研究を進めてきた。当初から予定していた時期に、論文を執筆することができ、国際誌に採択された。そのような意味で、当初の予定通り研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、自発駆動粒子の変形については考慮しなかったが、24年度の知見をもとにして、変形しながら動くアルコール液滴の運動についての実験、解析を行う予定である。これまでに申請者らは、アルコール(ペンタノール)液滴の自発的運動に関する研究を行ってきた。この系においては、液滴のサイズによって、変形せずに動く場合と、バナナ型に変形しながら動く場合、さらには液滴が分裂する場合の3通りがある。しかし、ここでは、液滴が分裂する場合は扱わず、液滴が変形し始める領域について扱う。実験結果を解析するため、液滴の変形をうまく実験結果から抽出できるような定量的な指標を導入し、その時系列変化および液滴の体積をパラメータとした分岐的解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度においては、実験が予想よりもスムーズに進んだため、予定よりも使用する予算が少なかった。25年度に予定している実験では、再現性などを担保するため、より実験回数を増やす必要があったり、うまくデザインされた試薬を用いる必要が出る可能性がある。そのために、今年度未使用の予算を使用する予定である。また、専門的知識を持つ研究者を訪問し研究打ち合わせを行うことも予定している。
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Research Products
(11 results)