2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740256
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
北畑 裕之 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20378532)
|
Keywords | アクティブマター / 非線形非平衡物理学 / 反応拡散系 / マランゴニ効果 / 界面張力 / 分岐解析 / パターン形成 / 散逸構造 |
Research Abstract |
本研究においては、界面張力勾配により駆動される液滴の自発的運動とその変形の関係について一般的な知見を得ることを目的として研究を進めている。自発運動する素子として液滴の代わりに変形せず形状が決まっている粒子を用いると、変形(形状)のみが運動に影響し、よりシンプルな系を構築することができる。そこで、24年度に引き続き、液滴の変形を考えず、液滴表面での界面張力の勾配が引き起こす運動や、与えられた形状に依存した自発運動粒子の運動を調べた。また、液滴が変形しながら動く場合についての理論的な解析も新たに開始した。具体的には、以下の3つのテーマを行った。 (I)樟脳粒を水面に浮かべると、樟脳粒から樟脳分子が水面に展開することにより界面張力を下がり、樟脳粒まわりの濃度場の対称性が破れることによって樟脳粒の運動も引き起こすことが知られている。24年度に引き続き、楕円形状の樟脳粒の運動についての解析を行った。24年度は摂動展開で記述できる微小変形について考察したが、25年度は大変形の場合に関して特殊関数を用いた展開を行い考察した。また、微小変形についての考察について論文を執筆し、投稿、採択された。 (II)これまで、われわれは化学振動反応であるBelousov-Zhabotinsky(BZ)反応液滴中で化学波が発生することにより液滴界面の界面張力が変化し、自発的に運動する現象をマランゴニ対流を起こして運動する現象について研究してきた。そこでは、Stokes方程式に基づいたモデルを用いた数値計算により、実験で観測できる運動を再現していた。そこで、実際にそのような対流構造が発生しているのかを観察するため、可視化粒子を分散させて実験を行った。その結果、ほぼ理論と一致する対流構造が観察され、提案したメカニズムが正しいことが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画書において、25年度は次の3つのテーマを行うことを計画していた。(1)液滴が自発的に変形しながら運動するとき、実験結果を解析するため、液滴の変形をうまく実験結果から抽出できるような定量的な指標を導入し、その時系列変化および液滴の体積をパラメータとした分岐的解析を行う。(2)液滴に大変形が起こった場合の液滴運動に関して理論的解析を行う。(3)液滴が化学反応と結合して運動する際、内部の流速分布を測定するなど、理論と実験との対応づけの精度をあげる。この3つの内容に関して、(1)に関しては、変形の度合いを評価するパラメータの導入はできたが、実験データの蓄積を行っている最中で、分岐的解析はまだ行っていない。そのような意味では、計画よりも進み具合は少し遅れている。(2)に関しては、もともとはphase-fieldモデルを用いた解析を行う予定であったが、特殊関数を用いれば解析的に取り扱えることがわかり、phase-field的なアプローチに加えて、解析的に大変形を扱うことを目指して研究を進めた。これは当初予想していた以上の内容である。(3)に関しては、BZ反応液滴が運動する際に、液滴の重心運動と液滴内部の流体運動を同時に観測することに成功した。その実験データを画像解析することによって、数値計算により得られた流速場と一致することが明らかとなった。これに関してはほぼ予定通り進行している。このように(1)においては少し予定より遅くなっているが、(2)については予定よりも進んでいる。また(3)については、ほぼ予定通りである。そのような意味で、トータルでみるとほぼ予定通りに進行していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度までに行った研究の継続として、液滴が自発的に運動しながら変形するときの実験データから変形と運動の相関を解析し、分岐論的に議論する。これまでに実験データを得ており、解析方法に関してはすでに考察しているので、データ量を増やすことにより、提案した解析方法が有効であるかも検証できる。また、25年度に引き続いて、円から大きく変形しているときの樟脳粒の運動に関して、特殊関数を用いた解析的な方法とphase-fieldモデルを用いた数値的な方法の両面から研究を進める。これらの結果を論文としてまとめて、公表する予定である。 また、26年度から新たに擬2次元系における液滴の運動についての解析を行う。理論的には、Stokes方程式に摩擦の項を加えることによって計算できると期待される。抵抗なしの2次元の場合はすでに計算したことがあり、摩擦がない場合には界面張力勾配によって運動したり、対流が起こったとしても変形は起こらないことを確認している。しかしながら、摩擦があるときには、変形が起こってもよく、解析を進める予定である。また、実験との対応も考えるべきではあるが、そのような抵抗付きの2次元系に対応するような実験系が確立されていないため、実験系をうまくデザインする必要がある。そのため、相分離系を用い、総分離している二相の間を出入りする界面活性剤を添加する、あるいは、化学反応や光照射、温度により性質、とくに界面吸着量が変わる界面活性剤を用いた系をデザインする必要がある。例えば、紫外線と可視光の照射により性質が変わる界面活性剤や、BZ反応に近い反応によって界面活性剤が化学反応を起こす系を用いることを考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度において、国際会議に出席予定であったが、別プロジェクトでも同じ国際会議に出席する必要が出たため、旅費に関して本若手研究の研究費より支出する必要がなくなったこと、そして、実験結果の解析補助のために謝金を支出する予定であったが、プログラムを改良することにより、オートメーション化でき、補助を依頼する必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。 抵抗があるときに2次元系における液滴の運動の実験には、さまざまな種類の化学物質を試す必要があるため、その試薬の購入にあてる。さらに、25年度に大きな進展がみられた特殊関数を用いて粒子の形状を表現し、その自発運動を解析的に扱う手法に関して、共同研究者である長山氏(北大)や飯田氏(東北大)と議論を重ねる必要があるため、その出張旅費にもあてる予定である。
|
Research Products
(15 results)