2012 Fiscal Year Research-status Report
ネットワーク構造とダイナミクス:基礎理論と最適なネットワーク構造の解明
Project/Area Number |
24740258
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
郡 宏 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (80435974)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 複雑ネットワーク / 進行波 / 化学反応系 / 生態系 |
Research Abstract |
種々の動的素子のネットワークにおける進行波ダイナミクスについて理論研究を行った。特に、ネットワーク上の進行波の性質とネットワーク構造の関係を明らかにした。進行波は普遍的に見られる。例えば燃焼反応、化学反応、金属の腐食、神経細胞や神経細胞回路における電気パルスの伝播、生態系などにおいて進行波は決定的な役割を担う。進行波は空間に広がる系で徹底的に研究されてきた。一方、ネットワーク系においても進行波は重要な概念であるにも関わらず、基礎的な研究 があまり行われていなかった。例えば神経細胞では情報が電気パルスの進行波によって伝わるが、神経細胞は枝分かれ構造を持つネットワークである。また、神経細胞集団の作るネットワークは極めて複雑な構造を持つ。このような視点のもと、24年度は双安定性素子の作る複雑ネットワークを考え、そのダイナミクスを数値的・解析的に調べた。特に、ランダムグラフにおける進行波の進行、後退、停止の条件を近似的に導き、相図を書くことに成功した。この相図は、1ノードあたりの結合数kと相互作用の強さDのパラメータ平面におけるものであり、小さい相互作用で進行波の停止が現れ、また、大きな結合数では進行波の後退が現れる。特に、進行波の後退は空間に広がる系には存在せず、複雑ネットワーク系に特有な現象である。また、スケールフリー・ネットワークにおける共存状態を、平均場理論を用いて近似的に解析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り24年度に計画していた双安定素子ネットワークの研究を順調に進め、完了することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度は各種ダイナミクスのある動的性質を最適化するネットワーク構造の探索に取り組む。心拍や体内時計といった生物リズムは、ペースメーカ組織が生成している(心臓は同房結節と呼ばれる細胞の集合体、体内時計は視交叉上核と呼ばれる神経細胞ネットワークが生成)。これらの生物リズムは、振動周期のゆらぎが極めて小さいことが特徴である。振動周期のゆらぎは、振動子ネットワークでは振動子単体に比べて減少することが知られている。申請者は振動周期のゆらぎの大きさとネットワーク構造の関係を研究し、ゆらぎの大きさがネットワーク構造を記述する行列の固有値と固 有ベクトルによって表現されることを示した (NJP 2010, arXiv:1108.4790)。特に周期の揺らぎに着目 すると、全ての固有値・固有ベクトルが関係する複雑な表式となる (arXiv: 1108.4790)。そこで、この表式を利用し、振動周期のゆらぎを最小化するネットワーク構造を探索する。ノード数 (つまり振動 子の数) が少ない場合は、リンクの重みを 0 と 1 に限定すれば、系統的に全ネットワーク構造を調べ ることが可能である。また、ノード数が大きい場合は、幾何学構造、ノード数、リンク数などを束縛条件として数値的な最適化を行う。ペースメーカ組織の細胞間結合は解剖学的によく調べられており、 特徴的な構造が知られているので、本研究で得られた構造と比較を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計算機や計算ソフトの購入や、データ収集と資料整理のための人件費に主に充てる。また研究成果発表のための旅費に使用する。
|