2012 Fiscal Year Research-status Report
水の液-液相転移と「速い音速」現象:ゆらぎ=エントロピーの直接測定
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24740265
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梶原 行夫 広島大学, 総合科学研究科, 助教 (20402654)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 液体 / ゆらぎ / 相転移 / 非弾性散乱 / 小角散乱 |
Research Abstract |
本研究の目的は、液体中のゆらぎの直接観測を行うことである。今年度は、以下4つの液体系に対して実験を行った。 ①水-メタノール系:超音波速度の組成依存性に異常が見られ、構造と音速の関係が古くから議論されてきた系である。この系に対して非弾性紫外線散乱(IUVS)測定を行い、当該周波数領域の音速を決定した。超音波速度とは異なる値が得られ、ゆらぎによる緩和現象の議論が期待できる。②Bi-Ga系:代表的な2相分離系である。X線小角散乱(SAXS)測定を行い、相分離に伴い密度ゆらぎが発散傾向を示すことを観測した。③Ge-Te系:(これまで研究を行ってきた)Se-Te系同様、本系では密度や超音波速度に異常が観測され、低密度相-高密度相の相転移が議論されてきた。この系に対して、SAXS、非弾性X線散乱(IXS)測定を行い、連続転移領域でそれぞれ、密度ゆらぎ、「速い音速」度合いが極大を示すことを、初めて観測した。④Pb-Sn系:代表的な2元共晶系である。SAXS測定を行い、組成、温度に対する密度ゆらぎの変化の観測に初めて成功した。 また、液体の超音波測定装置の立ち上げを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画から測定対象を一部変更・追加したが、全体としては目的に向かって計画以上に研究は進んでいる。 ①水-メタノール系については、SPring-8におけるIXS測定の課題が採択され、2013年5月末に実験予定である。予定通りの進捗状況である。また予定にはなかったが、イタリア放射光施設にてIUVS測定を行い、我々のシナリオを補強する結果が得られたことは、計画以上の進捗である。②Bi-Ga系については、実験的困難も覚悟していたが、SAXS測定について問題なく成功することができた。③Ge-Te系は計画にはなかったが、我々の主張を補強する重要なデータが得られ、目的達成に向け、予定以上の成果となっている。 ④単純な共晶系(Pb-Sn系)でもゆらぎの変化が観測できたことは、研究計画にはなかった新たな方向性が拓けている。 上記追加の実験等を優先したため、IXS用の低温容器の開発、超音波測定装置の開発については予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
IXS実験については、水-メタノール系、2相分離系を予定通り遂行する。 研究目的達成に向けては、超音波測定も重要な位置を占めているが、他の実験を優先したため、装置の立ち上げが現在やや遅れている。今後、高温(<1000度)、低温(>-20度)での測定が可能な測定容器の開発を行い、実際の測定を遂行する。 研究成果については、国内学会での発表の他、アメリカ・スタンフォードで開かれる非弾性X線散乱国際会議(IXS2013)での発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SPring-8での実験に必要な消耗品が約40万円、旅費が約10万円である。超音波測定用の消耗品が約40万円。 そのほか、国際会議の旅費に約30万円を予定している。
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