2013 Fiscal Year Research-status Report
動的変化するネットワークと結合力学系との相互作用が生む秩序化へのダイナミクス
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24740266
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
青木 高明 香川大学, 教育学部, 准教授 (30553284)
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Keywords | 複雑ネットワーク / ネットワークの力学モデル / ネットワークの動的構造 |
Research Abstract |
今日,ネットワークをベースにしたシステムは我々の社会や生活にとって大変重要になっている。工学・社会・生物における大規模システムでは多数の素子が相互につながることでネットワークを形成し,全体として機能的なシステムを構築しており,そのネットワーク構造と機能との関わりへの解明が必要とされている。これまでネットワークに関する研究では,多くの場合,静的な結合(Static graph)として解析が行われてきた.しかしながら,現実のネットワークは時々刻々と,動的に変化している.例えば,人間関係などの社会的ネットワークは刻々と変化している.インターネットなどの通信網,鉄道・道路などの交通網の工学的ネットワークも社会ニューズに応じて変化している. このようなネットワークの動的構造はどのようなダイナミクスで動き、そして秩序化されていくのか.本課題では、結合力学系+動的変化するネットワーク結合という新しい枠組みを提案し、この問いに答えるのが目的である.昨年度までの成果として,ネットワーク上のダイナミクスの代表例として,拡散現象(ランダムウォーク)に注目し,リソースの拡散・輸送ネットワークとリソースに依存したネットワーク変化を併せて考え,可塑的ネットワークのダイナミクスを調べた.結果として,リソースの統計分布が実データにおいて観察されているZipf則が再現されることを示した.さらにミクロに見ると各ノードは栄枯盛衰を繰り返し,非定常的となっていることが判明している. 当該年度では,ネットワーク構造形成の過程を力学系の視点から詳しく分析した.リャプノフ解析により,力学系の平衡状態を分類することで,この力学系が多数の固定点、周期解とともにカオス解を併せ持つことが分かった.さらに大規模数値計算により,それぞれの状態への到達割合を推定することで,ネットワークが大規模であるときは,ほぼ確実に系がカオス状態に至ることを確認している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究で提案したネットワークの力学モデルについて,大規模数値計算による解析が順調に進んでいる.ただし,必要な計算資源は増加しており,その対応は今後の検討課題である. これまでの研究業績については,現在フルペーパー論文をまとめており,投稿する予定である.また昨年度は,5月にアメリカの応用数学分野の研究集会で発表し,12月にはネットワーク科学の最先端の研究が集まるワークショップに参加し,研究成果の報告に努めた.その他,9月と3月に国際研究会で発表を行っている.これらの研究報告を切っ掛けに,既に共同研究がスタートしており,今後の国際共同研究を推進するために有意義な結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づき,次年度においては,モデルの拡張を行う.前年度までは、ネットワークノードの状態量(資源)としては1変数のみ考慮してきたが、現実の系では各種資源間の相互作用により多様な状態が形成されている。すなわち、多変数の反応拡散系にモデルを拡張する必要がある。そのような系のもっとも単純な例として、年齢層分布を考慮したpopulation dynamicsを考察する。すなわち、人の流動や物流を介した都市人口変動と、交通網ネットワークの発展・衰退変化との相互ダイナミクスを数理モデルとして定式化する。これにより交通網から人口変化への影響と、人口変化から交通網変化への影響を併せて考えることで、動的な交通網ネットワークの形成過程を扱う。年齢層ごとの移動量の違い(拡散係数のばらつき)や、資源に対する依存性をコントロールパラメータとして、年齢層ごとに居住区域の相分離現象や高齢化・過疎化問題のメカニズムを解明する。また交通網ネットワークを考慮するためには、「距離」の概念をネットワークに取り込む必要がある。これは現実のネットワークの多くが属する、あるクラスに共通する性質である。この点も考慮して数理モデルの改良を行う。 研究報告についても,昨年度に引き続き,国解会議等での研究発表に努める.研究予算としては,次年度においては配分額が60万となっている.このため,国内外の学会旅費と論文掲載料にあてる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末の出張が入ることを想定して確保していたが,実際には時期が四月以降にずれ込んだ. 旅費として使用する予定である.
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Research Products
(11 results)