2014 Fiscal Year Research-status Report
動的変化するネットワークと結合力学系との相互作用が生む秩序化へのダイナミクス
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24740266
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
青木 高明 香川大学, 教育学部, 准教授 (30553284)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 複雑ネットワーク / ネットワークの力学モデル / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日,ネットワークをベースにしたシステムは我々の社会や生活にとって大変重要になっている.このようなシステムについて,多種多様かつ大規模なデータが解析対象として利用できるようになっており,その基本原理を探るべく統計物理学的アプローチが行われている. 従来のネットワーク科学が対象としてきたのは静的なスナップショットであった.しかし現実のデータでは,ネットワークは動的であり時々刻々と変化する.このような大自由度の繋がりは,どのように秩序化され,構造形成されているのか.本課題では,相互作用自体が自発的に変化していく系の理解を進めることが目的である. 特に本年は,テンポラルネットワークの確率過程モデルの構築を行った.多くの社会ネットワークに於いて,相互作用は時系列情報として得られる.例えば感染者との接触時間,メールの送信時刻などがその例である.ネットワークはこのような時系列データを時間的に積分していくことで得られる.従来の解析はこの積分化されたネットワークに対して実施されてきた.しかし積分化されたネットワークでは時間的構造に関する重要な情報が欠落する.実際,多くの社会活動において,その活動イベントは一様ではなく,Burst的であるとの報告もある(Barabasi, A. L. (2005)). このようなネットワークの時間的パターン(テンポラル・ネットワーク)を解析する理論を作るため,包括的な理解に必要な数理モデル構築を行った.特に,実ネットワークに共通して見られる特徴として,時間的・構造的不均一性(バースト性とスケールフリー性)が報告されている.従来は,これらの性質は別々のモデルを用いて説明が為されてきた.私は集団間の相互作用に基づき,これらの時間的・構造的不均一性を統一的に説明する確率過程モデルの構築を行った.この研究は,現在投稿準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究で提案したネットワークの力学モデルについて,大規模数値計算による解析が順調に進んでいる.ネットワーク可塑的に変化する実例として,神経ネットワークが挙げられる.本モデルの応用例として,Network networks誌に論文を発表し,また日本神経回路学会誌に解析記事を書いた.
これまでの研究業績について,フルペーパー論文をまとめて発表を行った.また昨年度は,6月にネットワーク科学における中心的な国際会議で発表を行い,9月にはヨーロッパの複雑ネットワーク科学の国際会議ワークショップにて招待講演を行った.これらの研究報告を切っ掛けに,既に共同研究がスタートしており,今後の国際共同研究を推進するために有意義な結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
先ずは,前年度の成果をまとめて論文発表を行う.また2件の国際会議で発表予定である.またテンポラルネットワークの時間的パターンのモデルについてマスター方程式に基づく一連の解析を行っている.今後はこれらの成果をまとめて発表する予定である.
またその後の方針として,提案モデルの検証を含めて実データ解析を進める.ネットワークの時間的パターンについて,高次の時間的構造を解析する.これまでのテンポラルネットワークの時系列解析については,その活動イベントの時間間隔分布の冪性のみが議論されてきた.しかしながら,時間間隔分布においては,時系列相関などのバターンが全く無視されている.これらを抽出することで,実データに含まれる高次の時間的構造を解析し,さらにその時間変化パターンを生み出す過程について考察を行う.これによって,ネットワークで繋がった人間同士における社会活動の時間的パターンを理解したい.現在,テンポラルネットワークの実データの収集とその解析について,共同研究を進めている.
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Causes of Carryover |
年度末の出張計画のため確保していた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の出張として,利用予定である。
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Research Products
(17 results)