2012 Fiscal Year Research-status Report
2次元密度行列繰り込み群法によるディラックフェルミオンに対する強相関効果の解明
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24740269
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
白川 知功 独立行政法人理化学研究所, 柚木計算物性物理研究室, 基礎科学特別研究員 (40571237)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 密度行列繰り込み群 / 2次元強相関電子系 / 量子スピン液体 / トポロジカル秩序 / ディラックフェルミオン |
Research Abstract |
本研究では、密度行列繰り込み群法を2次元強相関電子系に応用し、量子スピン液体相やトポロジカルモット絶縁体などの新奇量子相の存在の有無を明らかにする事を研究目的とした。特に、これまで解析が困難とされてきた2次元強相関電子系を精密に計算するため、電子系の密度行列繰り込み群法では世界最高水準となる状態数 m=10000をとって計算を行う事を目標に掲げた。本年度は、開発した2次元密度行列繰り込み群法を3角格子ハバード模型の解析に応用している。 3角格子模型は量子スピン液体が実現している一部の有機導体の有効模型と考えられてきた。ところが、近年になって、スピン自由度のみを考慮した模型の範囲では、基底状態において磁気秩序が実現する事を支持する計算結果が多数報告されている事、有機導体で実現している量子スピン液体相は金属絶縁体転移近傍に位置している事などから、三角格子系における量子スピン液体の実現には電荷の揺らぎが重要な役割を果たしているのではないかという議論がなされている。そこで、本研究では36サイトクラスターの3角格子ハバード模型について、状態数m=10000までとって、基底状態に対する2重占有率のオンサイト斥力U依存性を調べた。その結果、Uの変化に伴い2重占有率に2回飛びがある事を確認した。Uが小さい極限と大きい極限では、それぞれ、金属相と磁気秩序絶縁相が実現している事が期待されるため、今回の我々の結果は、その間に異なる相が実現している事を示しており、量子スピン液体相が有力な候補と期待できる。現在は、この相におけるスピン・電荷ギャップの有無を調べ、有機導体で実現している量子スピン液体状態との関連を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はプログラム開発を行い、そのプログラムを用いたベンチマークにおいて状態数m=10000を取った計算の実装を目標に掲げていたが、これを達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、今年度開発した密度行列繰り込み群法を、ディラックフェルミオンが関連する2次元強相関電子系の解析に順次応用していく。トポロジカル絶縁体における強相関効果や量子スピン液体等の研究の動向には常に注意を払い、重要と考えられる模型には即座に対応するものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は、平成25年度請求額500,000円、平成25年度への繰越額295,040円の合計795,040円となっている。なお、繰越額が生じた理由は2次元強相関電子系解析装置のスペックと価格が予算申請時から変わったためである。そこで、平成25年度の使用計画は以下の通りとする。 消耗品費390,040円:データ処理・研究成果発表のためのノート型PC1台とソフトウェア 旅費405,000円:国内旅費年1回、国外旅費年1回
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