2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740275
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
辻野 賢治 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40415849)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子2次コヒーレンス度 / NOON状態 |
Research Abstract |
量子計量学の検証実験を行うときに懸念される、光子数識別器での光子計数の時間相関に関して、理論的検証を行った。 今回の提案では、量子計量学の検証実験を連続波光源を用いて行う、というものである。具体的には、連続波光源により生成したNOON状態というもつれ合った光子群を用いて、マッハツェンダー干渉計の位相を精密測定することを想定している。この際、マッハツェンダー干渉計からの出力光子を光子数識別器にて光子計数するのであるが、通常、光子数識別器の時間応答は、連続波光源から生成されたNOON状態のコヒーレンス時間よりも十分短い。今回の設計においても、NOON状態のコヒーレンス時間は約80nsであるのに対し、光子数識別器として採用したアレイ化Si APDの光子検出の時間応答は、10ns程度である。したがって、NOON状態の光子群の、光子検出イベントの時間的相関の振る舞いを調べておくことは、実験の準備として有意義である。しかしながら、例えば、NOON状態の光子数が2個だとして、2光子はほぼ同じタイミングで検出される(バンチング)のか、それとも、2光子は時間的に離れて検出されやすい(アンチバンチング)のか、といったことは今まで調べられてこなかった。 光子検出の時間相関を明らかにするため、量子2次コヒーレンス度を計算した。量子2次コヒーレンス度が1であれば、光子検出の時間相関はない。つまり、マッハツェンダー干渉計から出力される光子の検出タイミングは時間的にランダムである。量子2次コヒーレンス度が1以上であれば、光子検出のタイミングはバンチングしており、1以下であれば、アンチバンチングしている。光子数10までのNOON状態に対して計算した結果、全ての光子数で1を下回っていた。したがって、光子検出のタイミングはアンチバンチングしているということが、この結果から示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的では、連続波(CW)光源を用いて生成されたNOON状態を光子計数する際の最適な計数時間を明らかにすることである。 H24年度に行った解析によって、マッハツェンダー干渉計から出力される光子の検出タイミングは、アンチバンチングしているということが示唆された。つまり、光子の計数時間幅に関する一つの事実を、理論解析から明らかにした。この解析では、NOON状態を単一モードとして計算しているため、アンチバンチングの定量的な時間スケールまでは明らかとなっていない。しかしながら、検出器において、光子がまとめて複数個同じタイミングで検出されることはまれで、光子計数が時間的に離れて起こるであろうことが予測できる。今後は実験によって、今回の結果の実証を行いたい。 実験に関する進捗は、以下のとおりである。まず光子数識別器に関しては、アレイ化Si APD光子検出器に高速読み出し回路を接続したものに関して、その動作を確認した。時間応答としては、パルス幅10ns程度の出力信号を確認しており、良好な時間応答を得ている。今後は冷却化による低暗計数化を実現する。 CW光源によるNOON状態の生成に関しては、物品の調達と実験系の設計が終了した。現在設計している共振器から出力されるスクイーズド光のコヒーレンス時間は80ns程度である。スクイーズド光を発生させる結晶としてはBBOを選択した。BBOはもつれ合い光子を発生させるために実績のある結晶である。また、純粋度の高いスクイーズド光を生成するために、低吸収率を実現したBBOも用意している。 上述のように、研究目的の遂行のため、着実に研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
NOON状態の生成実験を継続する。すでにレーザー光源、共振器を構成する光学素子、光学部品は購入済みである。実験系の設計も終了しており、ダブラー、OPO、モードクリーナー等の動作をチェックしながら、スクイーズド光の生成を確認する。スクイーズド光の生成が確認されれば、マッハツェンダー干渉計を構築し、その入力ポートの一つからスクイーズド光を、もう一方からコヒーレント光をそれぞれ入射する。スクイーズド光の平均光子数と同じになるように、コヒーレント光を減光する。光子数識別器に関しては、高速化のめどがついたので、冷却することで暗計数率の低減を行う。 実験の道筋はすでにできているとはいえ、絶対成功する保障はない。もしも、共振器等が設計どおり動作せず、スクイーズド光の発生に遅れが生じるようであれば、BBOを直接ポンプし、スクイーズド光を発生させる。しかしこの場合、発生するスクイーズド光のコヒーレント時間はpsオーダーと非常に短くなることが予想される。したがって、光子検出器直前にエタロンを設置して、スクイーズド光のコヒーレント時間を実質的に引きのばす。検出イベントは激減するが、検証実験は行えると考えている。 H25年中に実験を完了し、学会での発表、論文化を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の半分ほどは、海外発表の旅費にあてる。 残りの研究費は、共振器を安定化させるための制御回路の構築、結晶の温度安定化のための制御回路、全体の系の制御回路などに利用する、電子部品、FPGA回路等に利用する予定である。
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