2012 Fiscal Year Research-status Report
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24740283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗田 玲 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (20579908)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ソフトマター |
Research Abstract |
これまで多くの研究は温度均一の条件で行なわれ、温度勾配下における実験は非常に数が少ない。特に、温度や外場に敏感であるソフトマターは、温度勾配に強く影響を受けると予想されるにも関わらず、温度勾配下でのソフトマターの実験例はほとんど見当たらない。 今回、水・界面活性剤混合系において、界面活性剤の分子が二分子膜を形成し、その二分子膜がラメラ相を形成する。このラメラ相を壁に平行に配向させ、その状態に温度勾配を印加した。その結果、ラメラ相の線欠陥が温度勾配によって、移動することが観察された。この線欠陥はラメラ相を特徴つける重要な要素であり、線欠陥の制御は非常に重要である。今回、その線欠陥を温度勾配によって移動することが可能となり、目覚しい成果の一つであるといえる。 また、二分子膜のラメラ相・スポンジ相やミセル相における温度勾配の影響を調べた。これらの転移温度や転移の濃度は強く温度勾配に依存することが観察され、また、その転移ダイナミクスは温度均一系とは異なることが見出された。 このように温度勾配をソフトマターに印加することにより、大きく温度均一系とはダイナミクスが違うことを見出し、今後、ソフトマターはより発展すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の大きな目的は、不均一状態におけるソフトマターの挙動が均一系とは大きく異なることを見出し、そのダイナミクスや機構を明らかにすることである。今回の結果は、均一系では観察されない実験結果であり、すなわち、温度不均一起因の現象であることは明らかである。温度不均一下におけるダイナミクスも十分に観察されており、その機構はまだ解明されていないものの、十分計画通りに進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、系として二分子膜、不均一場として温度勾配を印加しているが、ソフトマターという大きなくくりの中では十分とは明らかにいえない。ソフトマターには二分子膜の他にも高分子や液晶、ゲル、粉体など様々な物質があり、場として温度や電場、応力など様々考えられる。今後は、このような物質と場を組み合わせ、それぞれのダイナミクスを詳細に観察する予定であり。その結果を複合的に考察を行い、より一般的な機構を見出すことを目指している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、電場や応力場を制御する必要があり、さらにそれを顕微鏡で観察する必要がある。そのため、顕微鏡一式と透明電極等の電場に関わる消耗品を購入する必要があると考えている。また、粉体では系を駆動するための振動装置やそれに同期したカメラが必須となる。次年度の研究費は新しい不均一場での実験のセットアップに主に使う予定である。
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