2013 Fiscal Year Annual Research Report
ガラス化の起源とメソスコピック輸送:ソフトマター物理の視点から
Project/Area Number |
24740284
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 亮 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (20508139)
|
Keywords | ガラス転移 / 過冷却液体 / ソフトマター / 流体輸送 / 動的不均一性 / レオロジー / 動的スケーリング |
Research Abstract |
申請者は、協同性とメソスコピック流体輸送の関連性という視点に立脚し、過冷却液体やガラス状物質の流体輸送における空間スケール依存性、時空階層性を明確に意識した数値実験的研究を展開してきた。これまでに、過冷却液体における流体輸送は、メソスコピックな長さスケールに顕著な非局所性(相関)を有し、この輸送の相関長において、ミクロ輸送からマクロ輸送へのクロスオーバーを示すことを明らかにしてきた。新たに本研究課題の取り組みにおいて、メソスケールに展開する動的な協同性が流体輸送に本質的な寄与をもたらしうることを議論した:(i)輸送異常および構造緩和が単一の動的相関長で特徴づけられることを数値的に見出した。特に脆いガラス形成物質の過冷却液体ではこれまでに認識されているよりも一般的なスケーリング関係が成立しうる。これは、ガラス転移点に向かって、急激に発散するマクロな流体輸送が、協同性の成長の仕方に強く関連することを示唆する。(ii)数値実験により得られたスケーリングの概念に基づき、ガラスのスローダイナミクスや種々の異常な動的効果について現象論的アプローチを展開した。特に、構造緩和時間が動的相関長の4乗で変化するという動的スケーリング則を得る。これは、クラスター的な粒子集団の協同拡散として捉えることができる。さらに、この物理描像に基づき、Stokes-Einstein則の破れが、自然に理解できることを示した。(iii)メソスケールに展開する粒子の協同的な配置換えとストレス緩和が直接的な関連を持つことを示し、このメソスコピックな性質はストレス自体の空間相関(静的特性)ではなく、緩和イベントの空間相関(動的特性)に由来することを明らかにした。これらは動的な協同性が輸送異常に直接的に関連することを強く示唆するものである。
|
Research Products
(4 results)