2013 Fiscal Year Annual Research Report
細孔凝縮法による極端に単純な分子のガラス形成:熱容量と熱及び誘電緩和
Project/Area Number |
24740286
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
辰巳 創一 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (50533684)
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Keywords | 過冷却液体 / ガラス転移 / 液液転移 |
Research Abstract |
過冷却液体に潜む普遍性について,シクロヘキサンや四塩化炭素に代表されるような比較的単純な水素結合のような特別な分子間相互作用を持たない物質を非晶化させて研究した.実験的にはこうした単純な物質は極めて結晶化しやすいのだが,MCM-41などに代表されるようなナノ細孔中に対象物質を封入することによって安定に液体状態を観察することに成功した. 測定量としては,熱容量及びエンタルピー緩和を断熱型熱量計により測定,緩和時間の温度依存性を誘電緩和測定を通じて観察した.ガラス転移において,より複雑な分子において,融点とガラス転移温度の比が1/2~2/3程度になる,という経験則が知られているが,本研究で観察した単純分子においては,シクロヘキサンでも,四塩化炭素でも100 K前後に存在し,融点とガラス転移温度との比が1/3程度とはるかに小さくなることがわかった.このことは分子が単純であることと深く関連していると考えられる. また,さらにこのようにしてガラス転移温度を押し下げた結果,シクロヘキサン,四塩化炭素共に,ガラス転移温度より高温で構造化に伴う熱容量のハンプを持つことを見出した.これはカウツマンパラドックスと関連してガラス転移の向こう側に存在すると考えられている液体液体転移を反映しているものである可能性が高い.特にシクロヘキサンにおいては,熱容量のハンプに付随して,154 Kに鋭い1次転移を有しており,これは熱容量の形で液体液体転移を明確に発見した初めての例である. この転移がどのようなものに由来するのかはまだ明確には判明していないが,簡便なX線回折実験の結果などから,ある種の液体の素構造のようなものが実現したのではないかと考えており,その具体的な検証は今後の課題である.
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