2012 Fiscal Year Research-status Report
自走液滴及びその集団系を用いた非平衡揺らぎの特性評価
Project/Area Number |
24740287
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
住野 豊 愛知教育大学, 教育学部, 助教 (00518384)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非平衡物理 / 集団運動 / 自発運動 / ソフトマター / 散逸構造 |
Research Abstract |
本研究課題はマランゴニ効果や会合体の生成により自発駆動する液滴系及びその集団系を用い、個々の駆動体の運動様相の揺らぎを解析するとともに、集団化による揺らぎの集積挙動を解析することが目標である。24年度は物理化学系を用いた自発駆動の実験系作成(a,b)に加え集団運動の数理モデルの解析(c)を行った。 以下に具体的な成果を記す。 (a) 会合体形成を用いた自発駆動系の運動機構の理解 界面活性剤会合体の材料を水相中・油相中に分けて用意し、この2相を接触させると界面が自発的に動くことが見出されている。これまで会合体の弾性に基づいた力学的な不均衡を取り入れたモデルにより理解されているが、ダイナミクスを記述するモデルの作成には成功していない。24年度は、この点を解消するため会合体生成ダイナミクスを中性子小角散乱を用いて観察した。結果、界面近傍での会合体の急速な相転移の可能性が見出された。 (b)マランゴニ効果を用いた自発駆動系の数理モデル作成と集団運動系の作成 界面張力の不均一が気液界面や液液界面上で生じると、界面張力の空間勾配に比例したズリ応力が生じ流動が生じる。24年度は、このようなマランゴニ効果で運動する液滴の数理モデル化を行いChemistry Letters誌、Phys. Rev. E誌に報告した。また単純な条件から回転などの多様な運動が生じることを理論的に見出しPhys. Rev. E誌に報告した。 (c)理論モデルによる集団運動様相 基板上に分子モーターを吸着させ,棒状たんぱく質フィラメントとATPを導入するとフィラメントが連続的に基板上を運動する。ここでフィラメントの密度を大きくすると、フィラメントが巨大な渦を生成す。24年度は、この系をモデルするために作成された数理モデルの相図作成を行った。 以上に加え、両面テープの剥離挙動に関しPhys. Rev. E誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度は会合体生成による液滴運動系、マランゴニ効果による液滴運動系に関して、それぞれノイズに着目し自発運動の解析を行うこと、および理論的な解析を行うことを計画していた。 会合体生成で運動する系に関しては、予定していた小角X線散乱法に加え小角中性子散乱法を用いることで、運動機構に迫りうる会合体生成の詳細について理解が進んだ。この結果に関し学会等で報告しており、現在取りまとめの最中である。 また、溶質マランゴニ効果により運動する自発駆動系に関しては、個別の運動体に見られる揺らぎに関して解析を進めており、集団化の影響を今後探る予定である。加えて、集団化の影響が顕著に見られうる自発駆動体の設計に成功しており、現在この駆動体を大量に用意することで集団化の影響を探る段階となっている。 以上の実験的な研究の進展に加え、24年度は理論的な研究が大幅に進展した。特に低レイノルズ数の条件下において自発運動する液滴系の数理モデルに関しては、自発駆動の条件、内部での化学反応と結合した自発駆動の様子、自発的な回転運動を誘起する条件などに関して取りまとめ3報の論文を報告することができた。また非熱的な揺らぎにより運動する粒子集団のモデルに関しても数値計算に基づいた相図の作成が進んでおり様々な学会において報告をしている状況である。 今後これらの研究成果の相互連携を図ることで、一層の進展が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度からは,これまで行った(a)会合体生成による液滴運動系と(b)マランゴニ効果による自発運動系の2系統に関する実験に関して集団化の影響に特に着目して実験を行う。また(c)運動方向の記憶の影響を導入した自発駆動粒子の集団挙動に関して、解析を進め論文誌等に報告する。 以下にそれぞれの研究手法に対する研究実施計画を示す. (a) 会合体生成による液滴運動系 24年度小角中性子散乱により新たに見出した、μmスケールでの会合体生成のダイナミクスと界面運動の関連付けを行う。またこれによりダイナミクスを記述可能な数理モデルの作成を行う。以上に加え、散乱実験を通して溶液環境(塩濃度,界面活性剤濃度,温度等)により会合体生成のをダイナミクスの変化を観察するとともに、mmスケールでの界面の運動様相が示す変化を観察する。 (b) マランゴニ効果による自発運動系 24年度単一のペンタノール液滴の運動様相に関して解析を進めたので、25年度は多量のペンタノールが水面上におかれた状況に関しても研究を行う。これまでの予備実験で巨大な液滴は自発的に分裂をし、その後分裂と合一を繰り返しながらある特徴的サイズに落ち着く。このように、多量のペンタノール液滴が定常の分布に達した条件下においてサイズ・運動速度分布を解析する。以上に加え、形状に工夫を加えた樟脳粒子を用いて、自発運動する樟脳粒子の集団運動に関しても実験を勧める。 (c) 理論的なモデル系の構築 記憶の効果を導入した、自発駆動粒子の集団的振る舞いに対して数値計算を基に相図の作成を行う。相図を作成後、各々の相でみられる揺らぎの強度や相転移時に見られる履歴現象の観察を行う。また確率密度の方程式を導くことで集団の連続場記述も目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に予定していた一部試薬の購入を25年度に変更したため2208円の残額を残した。こちらは予定通り試薬の購入に用いる予定である。 25年度は数理解析を大幅に進める予定のため、20万円を数値計算用のPCにあてる予定である。また、試薬・消耗品にに関しても35万円を用いると予測される。よって物品費に関して計55万円を計上した。 また旅費に関してであるが、25年度はStatphys25等に参加し成果の発表をする。そのため旅費には海外渡航費30万円を用いる予定である。またマランゴニ効果による液滴運動系の理論モデルに関する研究打ち合わせを行うため、千葉大学・東北大学・北海道大学・広島大学などを訪問する予定である、そこで国内での研究発表も含め35万円を用いる予定である。以上より、25年度は旅費に65万円を計上した。 また、共同研究者を招待し議論を行う予定であるため、人件費・謝金として10万円を計上し、論文の校閲を予定しているためその他として10万円を計上した。
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