2014 Fiscal Year Research-status Report
レイヤー構造を持った液晶の自己拡散メカニズムの解明
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24740288
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 陽子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80609793)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | レイヤー構造 / 拡散現象 / スメクチック相 / 膨潤スメクチック相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最もシンプルな液晶相の構造である、レイヤー構造での構成分子の拡散現象に注目して実験を行っている。レイヤー構造を持つ系には大きく分けて2種類ある。一つは両親媒性分子と水の混合系のように2成分系で現れるもので、もう一つは単成分系で現れるものである。液晶の自己拡散では単成分レイヤーの液晶と、2成分レイヤーの液晶の拡散係数には大きな隔たりがあることから、異種のレイヤーの存在が拡散を阻害していることが推測される。この拡散阻害のメカニズムを解明するために、単成分液晶にアルカンを混合して2成分レイヤーとなる膨潤スメクチック相を示す試料を用いて、レイヤー間の非液晶物質が膜構成分子の拡散に及ぼす影響を調べた。 膨潤が起こっている事を実験的に確認するため、液晶試料(P6O8)にアルカン(n-テトラデカン)を混合した際のレイヤー間隔の温度依存性をX線回折測定を用いて測定した。結果、混合量と同じ割合でレイヤー間隔が伸びることが確認され、理想的に膨潤状態が実現できたことが確認された。また、この試料に対して、強制レイリー散乱法を用いて拡散係数を測定し、膨潤による拡散係数の変化を測定することに成功した。結果、レイヤー面内では膨潤による拡散係数の変化は見られない一方で、レイヤーを法線方向の拡散係数は膨潤によって小さくなることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、UV光照射による液晶分子自身の蛍光現象を利用して、液晶分子の自己拡散係数を測定する予定だったが、用いる液晶試料を変更した結果その原理が利用できなくなってしまった。しかし、強制レイリー散乱法を用いたことで、アゾ色素の拡散を測定することに成功し、拡散係数に対する膨潤の影響を測定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在用いている液晶試料と、アルカンでは10%近く混合するとマクロ相分離を起こしてしまうことが分かった。今後、膨潤の程度の違いを実験的に調べるために、別の液晶試料とアルカンを選定しなおして実験を行う。
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Causes of Carryover |
拡散係数測定の光学系の物品を購入する予定であったが、試料などを変更したために必要なスペックが変わった。現有の装置での予備実験の結果を踏まえた上で、必要な物品のスペックを選定・購入して拡散測定の本実験を行う予定であったが、予想以上に時間がかかり未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在は、必要な装置の選定が済んだため、新たに装置を購入し平成27年度に実験を行う。また、得られた結果の成果報告費用として、未使用額を使用する。
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Research Products
(1 results)