2012 Fiscal Year Research-status Report
計算機シミュレーションで探るアミロイドベータペプチドのオリゴマー形成過程
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24740296
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
伊藤 暁 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (90595381)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度はクーロンレプリカ交換法の開発をおこなった。この方法を用いることで、従来の温度のレプリカ交換法と比較して水中の生体分子系に対して少数のレプリカで(計算コストを抑えて)構造空間の効率的サンプリングが実現できるようになった。この方法を水中のアミロイドベータペプチドのC末端フラグメントであるAbeta(29-42)1分子に適用した。シミュレーション結果から水中のAbeta(29-42)に対する自由エネルギー地形を計算し、自由エネルギー地形のエネルギー極小状態からAbeta(29-42)のモノマー状態での複数の安定構造を得ることに成功した。また、それら安定構造間の構造遷移の過程の詳細を明らかにすることにも成功した。 さらに、レプリカ置換法の開発にも成功した。温度のレプリカ交換法ではレプリカ間の温度交換にメトロポリス法を用いるが、レプリカ置換法ではレプリカ間の温度置換に諏訪・藤堂法を用いる。諏訪・藤堂法はメトロポリス法とは異なり詳細釣合の条件を満足せずに状態遷移を行うモンテカルロ手法であり、状態遷移のリジェクト率を最小化することができる。この方法をレプリカ置換に用いることで、従来のレプリカ交換法と比較してレプリカの温度空間のより効率的なサンプリングを実現することが可能となった。この方法を水中のC-peptideに適用することで、C-peptideの詳細なフォールディング過程を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、水分子をあらわに取り入れたアミロイドベータペプチド系に対する分子シミュレーションを行うための手法の開発に成功した。また、実際に水中のアミロイドベータペプチドのシミュレーションからその安定構造と構造遷移の過程を得ることにも成功した。現在、アミロイドベータペプチドの本数を順次増やしたシミュレーションを行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で開発したシミュレーション手法を用いて、アミロイドベータペプチドのオリゴマー化の過程を明らかにする。すでにアミロイドベータペプチド1分子に対する安定構造と構造遷移の過程の詳細を明らかにすることには成功しており、開発した手法の有用性を示すことができた。今後はアミロイドベータペプチドの本数を順次増やしたシミュレーションを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
情報収集・研究成果発表を目的として日本生物物理学会・日本物理学会・タンパク質科学会・分子シミュレーション討論会に参加する(国内旅費300千円を計上)。また、国際会議にも毎年参加し情報収集・研究成果発表をおこなう(外国旅費300千円を計上)。シミュレーションで得られた大量のデータを保存するために必要なハードディスクを購入する(消耗品費100千円を計上)。
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Research Products
(9 results)