2013 Fiscal Year Research-status Report
計算機シミュレーションで探るアミロイドベータペプチドのオリゴマー形成過程
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24740296
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
伊藤 暁 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (90595381)
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Keywords | アミロイド形成 |
Research Abstract |
本年度は昨年度開発をおこなったレプリカ置換法をさらに発展させてハミルトニアンレプリカ置換法の開発をおこなった。温度のレプリカ置換法では3つ以上のレプリカ間で温度の置換をおこなうが、この方法では3つ以上のレプリカ間でハミルトニアン中のパラメータを置換する。この方法により、レプリカ置換法と比較して水中の生体分子系に対して少数のレプリカで(計算コストを抑えて)構造空間の効率的サンプリングが実現できるようになった。ハミルトニアンレプリカ置換法の一つであるクーロンレプリカ置換法をアミロイドベータペプチドのC末端フラグメントであるAbeta(29-42)2分子に適用した。この時、溶媒分子として水分子をあらわに扱っている。このシミュレーション結果から水中のAbeta(29-42)2分子に対する自由エネルギー地形を計算し、自由エネルギー地形からAbeta(29-42)がどのような経路を通って(構造を経由して)二量体化するのかを示した。 また、能勢・フーバー熱浴を用いた温度一定のシミュレーションの時間発展を時間発展演算子によりおこなうときに、演算子を作用させる順番が物理量の平均値にどのような影響を及ぼすのかを調べた。その結果、演算子を作用させる順番により位置に関する物理量、あるいは運動量に関する物理量、あるいはその両方が時間発展の刻みの二乗に比例して正しい値からずれることを明らかにした。このずれは系の大きさが大きくなっても有限であることも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、水分子をあらわに取り入れたアミロイドベータペプチド系に対する分子シミュレーションを行うためのより強力な手法の開発に成功した。また、水中のアミロイドベータペプチドフラグメントに対して、その二量体化の経路を得ることにも成功した。現在、アミロイドベータペプチドフラグメントの本数をさらに増やしたシミュレーションを行っているところである。さらにアミロイドベータペプチド全体を複数分子含む系のシミュレーションも行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で開発したシミュレーション手法を用いて、アミロイドベータペプチドフラグメントのオリゴマー化の過程を明らかにする。すでに二量体化の経路については明らかにしたので、今後はより多数の分子に対してシミュレーションをおこない、アミロイドベータペプチドフラグメントがどのようにオリゴマー化するのかを明らかにしていく。また、アミロイドベータペプチド全体を複数分子含む系のシミュレーションもおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
参加を予定していた学会の日程が他の学会の日程と重なっていて参加できなかっため。 平成26年度開催の国際会議 IUPAB Congress 2014 へ参加するために使用する。
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Research Products
(13 results)