2014 Fiscal Year Annual Research Report
計算機シミュレーションで探るアミロイドベータペプチドのオリゴマー形成過程
Project/Area Number |
24740296
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
伊藤 暁 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (90595381)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | アミロイド線維形成 / 分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は平成25年度の研究を発展させてクーロンレプリカ置換法を用いてAβ(29-42)の二量体化の過程より詳細に調べた。Aβは凝集することでアルツハイマー病の原因と考えれているアミロイド線維を形成する。Aβ(29-42)はAβのアミロイド線維を促進するC末端領域のフラグメントで、Aβ(29-42)のみでもアミロイド線維を形成することが知られている。二量体化の過程はアミロイド線維形成の初期過程にあたり、この過程の詳細を知ることでアミロイド線維形成過程の理解につながる。本研究によりAβ(29-42)二分子が近づくとβ-ヘアピン構造が増加し、さらに近づくとアミロイド線維中で見られるような分子間β-シート構造が増加することが分かった。β-ヘアピン構造が増加した理由は、β-シート構造を作っている残基の疎水性側鎖間の分子内コンタクトが別の分子の疎水性側鎖との分子間コンタクトによって安定になるためであることが分かった。また、二分子が近づくことにより形成される分子間β-シート構造は分子内β-シート構造を作っている残基に形成されやすいことも分かった。すなわち、安定なβ-シート構造にAβ(29-42)が近づくと、Aβ(29-42)とβ-シート構造の間で分子間β-シート構造が生成されやすくなることが分かった。研究機関全体を通じてAβのオリゴマー化の過程を調べるためのシミュレーション手法であるレプリカ置換法、及びハミルトニアンレプリカ置換法の開発に成功した。これらの手法により既存のシミュレーション手法と比較して生体分子の構造空間を効率的に探索することができるようになった。ハミルトニアンレプリカ置換法の一つであるクーロンレプリカ置換法を用いることでAβフラグメントの二量体化の過程の詳細を明らかにすることができた。
|
Research Products
(10 results)