2013 Fiscal Year Research-status Report
第一原理計算に基づくシリコンナノシートの有機分子修飾による機能化
Project/Area Number |
24740297
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
森下 徹也 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (10392672)
|
Keywords | シリセン / ナノシート / 第一原理 / シリコン / 分子動力学 / 有機分子 |
Research Abstract |
平成25年度は、金属基板上のpristineなSiシート(シリセン)の構造形成と層状に積み重なったフェニル基修飾Siナノシートを課題対象とした。 シリセンに関しては金属基板上での形成が実験的に確認されているが、主に銀の(111)表面のみで他の金属基板ではあまり作成されていない。そこで他の金属基板での形成可能性を明らかにするために、密度汎関数理論に基づく第一原理分子動力学計算を行い、アルミニウムの(111)面上でも、ハニカム格子を持つシリセンが安定に存在できることを明らかにした。またAFM操作による原子の引っ張り実験をLogMFD法によりシミュレーションしたところ、ハニカム型ではない新しい2次元格子構造を持つシリセン(ポリゴナルシリセン)が形成されることもわかった。ポリゴナルシリセンはハニカムシリセンよりも高い電荷分布を保持し、電気伝導性が高い可能性がある。さらに振動スペクトルの計算も行い、基板原子とSi原子との相互作用の評価も行った。 フェニル基修飾Siシートに関しては、層状に積み重なった場合のシート間相互作用を、ファンデルワールス(vdW)力を加味した計算を行うことで評価した。vdW力を取り入れた計算では層間距離は実験値と一致する一方で、vdW力を取り入れない場合は過小評価されることがわかった。さらに詳細な計算から、OptBタイプのvdW汎関数が最も層間引力を大きく見積もることがわかった。このような知見はシートを積み上げてデバイスを設計する際に重要で、理論設計を行う際に非常に有用である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画ではフェニル基修飾されたSiナノシートを扱う予定であったが、シートが積層した場合のシート間相互作用の第一原理的な評価を計画通り行うことができた。また当初計画にはなかった金属基板上のシリセン形成に関する計算も実施することができ、アルミニウム基板上での新しいシリセン構造形成の予測に成功した。以上より、本研究課題は概ね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題が開始された頃から、pristineなSiシートであるシリセンの合成が実験的に大きく注目されており、シリセンを対象とする理論計算の報告も飛躍的に増加している。このような現状を鑑み、平成26年度はこれまで以上にシリセンに関する計算を実施する予定である。具体的には、金属基板上で形成されたシリセンが大気にさらされた際にどのような酸化反応が生じるかを調べるために、酸素分子がシリセンに吸着する過程を第一原理分子動力学シミュレーションにより原子レベルから解明する。それに伴い、電子状態がどのように変化するかを明らかにし、酸化によりシリセンに発現する特性のデバイス応用を検証する。 一方、有機分子修飾Siシートの計算も計画通り実施する。フェニルアセチレン分子をターゲットとし、特に分子吸着の数密度が電気特性にどのような影響を与えるかに注目して、電子物性を解明する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた海外研究者への訪問が延期になった関係で繰り越し金が発生し、25年度は当初予算よりも増額された。しかしながら、海外渡航は訪問先の研究者が25年度中に亡くなってしまった為、増額分は予定していたファイルサーバの増強にあて、さらに一部を26年度に繰り越すこととした。 26年度は最終年度であり、成果発信を目的とした国際会議での研究発表のために、外国及び国内旅費を計上する。論文投稿料、別刷り印刷代を前年度同様に計上し、さらに電子計算機使用料も計上する。物品費として、生成データのストレージのための記録メディア、ハードディスクドライブの購入を予定している。
|
Research Products
(4 results)