2012 Fiscal Year Research-status Report
首都直下の新たな地震発生モデル-スラブの蛇紋岩化とそのテクトニクス的意義-
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24740300
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 淳一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30361067)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地震波減衰構造 / 関東地方 / 蛇紋岩 / スペクトル比 |
Research Abstract |
本研究の目的は,地震波減衰構造の高精度推定を行い,関東地方下のフィリピン海スラブ内の蛇紋岩化域西縁に沿う弱面での強度の空間分布を検討し,蛇紋岩化域西縁での変形が関東下の地震テクトニクスの中で担う役割を考察することである. 本年度は,解析のための高品質のデータセットを作成するために,関東地方とその周辺で過去に発生した地震波形を収集し,P波,S波到着時刻の読み取りを行った.読み取りでは,データの質を保つために,読み取り精度が0.5秒を超えるような観測値はデータから除外した. また,減衰構造を精度よく推定するための解析プログラムを開発した.従来の多くの研究では,震源のコーナー周波数,観測点の増幅特性,波線に沿う減衰を表すパラメータの3つを同時に推定しているが,これらのパラメータ間に強いトレードオフがあるという問題がある.本研究では,「コーダ波を用いたスペクトル比法」により,まず地震毎のコーナー周波数を高精度で推定した.次いで,観測点の増幅特性も同時にインバージョンするプログラムを開発し,スペクトル比法で推定したコーナー周波数を用いて,それぞれのスペクトルの形状から波線に沿う減衰を独立に決定した.この手法では従来の手法に比べて解を安定して求めることができる. さらに,解析プログラムの動作確認のため,過去に減衰構造が推定されている東北地方のデータに上記の手法を適用し,解析を行った.得られた結果は,先行研究の結果と調和的であるが,より細かい不均質構造がイメージングされており,本研究で開発した解析プログラムは減衰構造の高分解能推定に極めて有用であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は交付申請時に記載した研究計画通りに進んでおり,来年度に予定されている本解析の準備はほぼ整った.本研究は順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,本年度に作成したデータセットと解析プログラムを用いて関東地方の三次元地震波減衰構造を推定する.対象とする深さ範囲は0-200kmを予定している.次に,高減衰域の分布からフィリピン海プレート内部に見出されている蛇紋岩化領域の広がりを明らかにする.減衰構造に加え,これまでに得ているP波,S波速度とポアソン比も考慮に入れて,紋岩化域西縁の変形様式を検討する. その際,数値シミュレーションによる関東下の温度構造も考慮する. 本研究で得られた成果を国外の査読付き雑誌に投稿し,首都直下の地震発生モデルを発表する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成25年度請求額とあわせ,平成25年度の研究遂行に使用する予定である,
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