2013 Fiscal Year Annual Research Report
首都直下の新たな地震発生モデル-スラブの蛇紋岩化とそのテクトニクス的意義-
Project/Area Number |
24740300
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中島 淳一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30361067)
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Keywords | 地震波減衰構造 / 蛇紋岩 / フィリピン海プレート / マントル / マグマ活動 |
Research Abstract |
本課題の目的は,関東地方下の地震波減衰構造の高精度推定を通してフィリピン海スラブ内の蛇紋岩化領域の分布域を精査し,地震テクトニクスにおいて蛇紋岩化域西縁が担う役割を明らかにすることである. 昨年度は,地震波減衰を表す減衰パラメータと観測点直下の周波数特性,震源の周波数特性を分離する手法を開発し,その手法を東北地方の地震波形データに適用した.その結果,マントルウエッジには沈み込むスラブに平行な斜めの高減衰域が存在し,それは地震波低速度域と一致すること,下部地殻では火山群の直下にのみ高減衰域が分布することなど,東北地方のマグマ活動を理解する上で重要な知見が得られた. 今年度は昨年度に開発した手法を関東地方のデータに適用し,フィリピン海スラブ内の詳細な減衰構造の推定を行った.その結果,スラブマントルの蛇紋岩化域は高減衰を示すこと,高減衰域の西縁は地震波低速度域から期待されている場所と一致すること,過去に発生した2つのM7 クラスの地震は高減衰域の西縁で発生したことなどが明らかになった.さらに,下部地殻では高減衰域が広く分布しており,そこでは地震活動が極めて低調であることも明らかになった.これらの結果は,フィリピン海スラブおよびその直下に沈み込む太平洋スラブから供給されたスラブ流体により構造不均質が生じており,スラブ内地震や内陸地殻の地震はそのような構造不均質と密接に関係して発生していることを強く示唆している.このように,本研究により得られた地震波減衰構造は,関東地方の地震テクトニクスに関する新たな知見を提供する極めて重要な観測結果である.
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