2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24740316
|
Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
杉山 耕一朗 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 研究員 (60463733)
|
Keywords | 雲対流 / 惑星大気循環 / 巨大ガス惑星 / 木星型惑星 / 数値計算 |
Research Abstract |
平成 26 年度は, 論文誌での研究成果の公開, 雲解像モデルの計算速度向上, 小規模な数値実験の実施, を行った. 論文では, これまで木星大気を想定して行った水平鉛直 2 次元の雲対流の数値実験を報告した. 得られた大気構造の特徴や大気構造の凝結性成分気体の存在度に対する依存性をまとめ, 数値実験に現れた雲対流活動の間欠性のメカニズムを詳細に議論した. 数値モデルの改良においては, ボトルネックとなっていた力学コアを大幅に書き換えることで, 計算速度を 2 倍以上向上させた. 予備的実験として, Sugiyama et al. (2009) と同様に, 対流圏界面付近に予想されるよりも非常に強い放射冷却を与えた雲対流の長時間数値計算を実行した. 木星・土星のそれぞれについて, 水平鉛直 2 次元の場合・3 次元の場合の 2 通りの数値実験を行うことで, 統計的平衡状態での流れ場の特徴と平均的大気構造を求めた. 木星大気と土星大気では, 以下の鉛直構造の定性的特徴は共通していた; 定常的に活発な積雲が発達するために, H2O と NH4SH の雲粒が対流圏界面まで上昇すること, 活発な対流活動によって雲対流層はよく混合すること, H2O 持ち上げ凝結高度が, 流れ場と物質分布に対して境界として作用すること, が上げられる. 一方で, 木星大気では雲対流層は狭くて強い上昇域と広くて弱い下降域によって特徴付けられるのに対し, 土星計算では雲対流層上層で上昇域の面積が下降域の面積と同程度であった. このような流れ場の違いを生じさせる原因については, 現在検討中である. また, 木星計算・土星計算のそれぞれにおいて, 3 次元の数値実験と水平鉛直 2 次元の数値実験で得られた鉛直構造の定性的特徴は整合的であることを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 25 年度に計画していた数値実験, 論文誌での研究成果公開, 雲解像モデルの速度向上のための取り組み, を実施することができたため.
|
Strategy for Future Research Activity |
申請者らがこれまでに開発した雲対流モデルを用いた数値実験を行う. 系を水平鉛直 2 次元に限定した場合, 系を 3 次元に拡張した場合について, 木星・土星・天王星・海王星のそれぞれについて長時間の雲対流計算を実行することで, 統計的平衡状態での大気構造および流れ場の描像を掌握する. 数値計算の実行においては, 凝結性成分気体の存在度をパラメタとして広く変化させる. 太陽系形成論から予想される範囲を念頭に, 大気深部での凝結性成分気体の存在度を太陽組成の 0.1, 1, 3, 10, 30 倍とする. 得られた結果を元に, 鉛直 1 次元の平衡雲凝結モデルの結果と比較検討を行い, 運動や雲微物理過程を陽に扱うことによって初めて得られる平均的大気構造の特徴の抽出と解釈を行う. 具体的な議論のポイントは, 1) 雲対流モデルと平衡雲凝結モデルによって得られた凝結性成分気体と凝結物の平均的な鉛直分布の差を明らかにし, 両者のずれを生み出す原因を議論する. 2) 木星以外の惑星においても積雲活動が間欠的に生じるか否かを確認し, 積雲活動の間欠性のメカニズムが全ての惑星で共通か議論する. 3) 凝結・化学反応に伴う安定層が流れ場や物質分布に対する境界として作用するか, とりわけ天王星・海王星では CH4 の凝結に伴う安定層が境界として作用するか議論する. 4) 2 次元計算と 3 次元計算による平均的大気構造の差異を議論する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費もしくは計算機関連の消耗品費として十分な金額ではなかったため. 次年度助成金と合わせて, 計算機関連の消耗品費として支出する予定である.
|