2015 Fiscal Year Annual Research Report
複数の地球観測センサーを利用した北極の極成層圏雲と成層圏オゾン層の化学過程の解明
Project/Area Number |
24740318
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
齋藤 尚子 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 助教 (50391107)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 成層圏オゾン / 塩素化合物 / 極成層圏雲(PSCs) / 国際宇宙ステーション / 人工衛星 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2009/2010年の北極の冬春季に着目して、国際宇宙ステーション搭載のSMILESやその他の衛星データを用いて、気温場とPSCsの出現およびその化学組成、オゾン破壊物質とリザボア物質の濃度やオゾン濃度などを時系列的に解析し、それぞれの関係性を定量的に明らかにすることで、将来のオゾン層回復の予測の高精度化に貢献するというものである。 H27年度は、情報通信研究機構で開発されたSMILESのL2研究プロダクト(L2r)のV2.1.5データおよびACE-FTSのL2プロダクトのV3.0データを用いて、2009/2010年の北極成層圏の塩素化合物の活性化と空気塊の気温履歴と太陽天頂角(SZA)との関係を精査した。その結果、気温が200 K以下でSZAが96度未満であっても塩素活性が起こっていない空気塊は、SZAと等価緯度の値から十分に太陽光が当たっていないために塩素が不活性であったか、もしくは、極渦の縁付近で極渦内の大気と塩素活性が起こっていない極渦外の大気が混ざった空気塊を観測していたためであると推察された。また、SMILESで観測された空気塊の気温履歴からClOが高濃度である空気塊については、観測時あるいは観測される数日前にPSCsの形成に十分な低温を経験したことで塩素の活性化が起こったと結論づけることができた。 さらに、北極成層圏の塩素活性時とバックグラウンド時の、ClO、HOCl、HCl、ClONO2の総和と一酸化二窒素から推量される「総塩素量」の差を詳細に比較した結果、塩素活性時には極渦内で最大1.5-2 ppbのClOOCl量(ClOダイマー)の存在が明らかになった。本研究によって、今まで衛星による観測例がほとんどないClOOCl量を成層圏の平均場ではなく個々の観測地点において推定できる可能性を示すことができた。
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Research Products
(1 results)