2013 Fiscal Year Research-status Report
活発化した日本海帯状雲がもたらす豪雪の雲微物理過程の解明
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24740319
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大東 忠保 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (80464155)
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Keywords | 帯状雲 / 豪雪 / 偏波レーダー / 粒子判別 / 雲微物理過程 / 日本海 / 寒気吹き出し / 固体降水粒子 |
Research Abstract |
偏波レーダーを用いた粒子判別結果を各種事例に適用し、その他のパラメータとの総合的な判断、またこれまでの既成概念との比較から、粒子判別が妥当な結果を得られていることを確認してきた。また、レーダーや、雲粒子ゾンデという特殊ゾンデから得た雲微物理量を、数値シミュレーション結果と比較してきている。少なくとも対象とした事例については数値シミュレーション結果の雲微物理量は観測と合わない部分が存在する。これは数値モデルの雲微物理過程が問題点を含んでいることを示している。本研究の目的の解決に影響が大きい部分として、使用する数値モデルでは霰が過剰に生成されるという特性がある。数値シミュレーションの雲微物理過程は、世界的にみてもまだまだ不十分と言わざる部分が多くあるため、この研究の中での完全な解決は難しい。使用する数値シミュレーションの特性を十分に把握しながら、シミュレーション結果を解釈する必要がある。 降雪バンドの雲微物理過程については、2009年1月25日から27日に日本海上で形成された太い雲バンドによる降雪が強化される過程について偏波レーダーを用いて調べた。降雪が強化された領域において最も卓越する粒子は雪片であるが、降雪の強化がみられない部分と比較して霰が卓越する降水時間帯が多いことがわかった。山間部における豪雪はほとんどが雪片であると言われているが、海岸部に豪雪がもたらされるような場合については、霰による降雪量が相当量含まれることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
降雪帯の雲微物理過程を調べるために、2009年1月25日から27日に日本海上で形成された太い雲バンドが強化される過程について偏波レーダーを用いて調べた結果について論文としてまとめ平成24年度に査読付き雑誌に投稿していたが、当該年度(平成25年度)に受理、掲載された。この点については、想定外に研究が進んでいる。 一方で、数値シミュレーションと観測における雲物理量の比較から、雪片と霰の比率において霰の量が過剰に生成されることがわかってきている。帯状雲によってもたらされる降雪の雲微物理過程を解釈する際に、数値モデルの特性は非常に重要であるが、数値モデルにおける雲微物理過程の不十分さは現在も世界的な問題であり、問題を完全に解決することは難しい。現状としては、霰が雪片に対して多いという数値モデルの特性を理解した上で、シミュレーション結果を解釈する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度として、高解像度による数値シミュレーションを実施し、帯状雲の活発化に伴う雲微物理過程・雲域の広がりの変動と、上昇流・鉛直シアなどの力学的要因の関係を明らかにする。また、帯状雲の活発化に伴って、水蒸気が凝結・凝固した量のうち地上に降雪としてもたらされる量がどのように変動していくのかを調べる。このことは、すなわち豪雪時に降雪の形成効率がどのように変わっていくかを調べるということである。これらの結果を解釈し、帯状雲が活発化した際の降雪形成の概念モデルを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大容量ディスクアレイを購入予定であったが、既存のディスクに現状余裕があり購入を控えたため。 10月に福岡で開催予定の気象学会への参加旅費、研究打ち合わせ旅費、データバックアップ用のハードディスクドライブの購入に使用する予定である。
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