2014 Fiscal Year Annual Research Report
活発化した日本海帯状雲がもたらす豪雪の雲微物理過程の解明
Project/Area Number |
24740319
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大東 忠保 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 特任助教 (80464155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本海 / 帯上雲 / 降雪機構 / 雲微物理 / 霰 / 氷晶 / 雲粒子ゾンデ / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
冬季日本海に形成される帯上雲は、寒気吹き出し時において最も活発な降雪をもたらす雲システムの1つである。前年度までの研究によって、海岸部で特に発達した帯上雲が形成される事例について解析し、偏波レーダーを用いた観測的研究から帯上雲の強化時には、霰降水の頻度が大きくなることを示してきた。 本年度は霰のもととなる氷晶に着目して研究を実施した。エアロゾル粒子が核となり昇華、もしくは液体の雲粒が凍結することによって形成される微細な固体粒子である氷晶は、雲・降水粒子の形成過程において最もよくわかっていない素過程の一つである。このため、数値シミュレーションでの表現が不十分であることが予想される。氷晶の表現が不十分であるとすれば、その後粒子が成長して生じる雪片や霰の比率や分布に影響を与えるため、帯上雲の降雪機構に大きく影響する。上空に存在する氷晶の観測データは日本では非常に少ないため、今回の目的においては梅雨期に雲粒子ゾンデによって氷晶の雲微物理量を観測した事例を利用することにした。 数値モデルは名古屋大学で開発されている雲解像モデルCReSSを使用した。数値シミュレーションの結果、上空の氷晶の数と質量は過剰であるが、その下方の雪は少なかった。また、対流域が過剰に発達した結果となった。これらから言えることは、上空で形成される氷晶が降水に変換される過程が過小であることと、一方で対流域の中層では氷晶はあまり生成されずに上昇流中で凝結した水は霰の成長にほとんど使われ、降水が局所化していることがわかった。 事例が少なく追加の比較も必要であるが、帯上雲が発達した場合とそうではない時の降雪機構のシミュレーションによる表現には改良の余地が十分あることが示唆される。一方、シミュレーションと比較する雲微物理量の観測データが少なく、霰のもととして重要な過冷却水滴などの量的観測についても今後必要である。
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