2012 Fiscal Year Research-status Report
南アジアにおける雲・降水のマルチスケール時空間変動の解明
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24740320
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤波 初木 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 助教 (60402559)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アジアモンスーン / 雲 / 降水 / 季節内変動 / バングラデシュ / インド / ミャンマー |
Research Abstract |
陸上のアジアモンスーン域で、雲・降水の準2週間周期(7~25日)変動が最も卓越しているバングラデシュ周辺(以後キー領域とする)の降水変動に注目し、雲・降水及び大気循環場の時空間変動の詳細な解析を行った。同周期帯の降水の空間変動は顕著な位相変化は示さず、バングラデシュ周辺で定常波的に雨が増減した。特に、シロン(メガラヤ)高地南面とミャンマー西岸で降水変動の振幅が大きかった。これらは同周期帯の下層風の変動が、チベット・ヒマラヤ南面に東西に延びるガンジス平原で顕著であるために生じる。キー領域では下層風が西~南西風時に降水量が増加し、東~南東風の時に降水量が減少する。降水極大時の循環場の事例解析により、活発期の降水が非常に多い場合には、バングラデシュ周辺に直径500Km程度の閉じた等圧線を持つ低気圧システムが発達する事例が約半数を占めることが明らかになった。同周期帯の季節内変動は季節降水量の年々変動にも影響を及ぼすため、降水の極大値をもたらす降水システムと地形性降水の関係を示した点は重要である。一方、東・南東風時にはガンジス平原に沿って風が加速するため、降水量は少なくなる。これらの下層風の変動は西太平洋付近から西進する赤道ロスビー波がもたらしている。下~中層の赤道~亜熱帯の大気循環場偏差の構造は、ほぼ順圧な構造を持っている。興味深い点は、中緯度大気の中・上層にも非常に顕著な循環場偏差が生じることである。活発期(不活発)にはチベット高原中・上層に顕著な低(高)気圧偏差が生じ、その風上側では高(低)気圧偏差が生じる。これらの偏差は亜熱帯ジェットとチベット高気圧の変動が大きく関係していることを示している。キー領域周辺の顕著な準2週間周期変動は、熱帯波動と中緯度大気の相互作用系の下で、チベット高原及び周辺の特徴的な地形分布によって雲・降水変動として特に顕在化されている可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究は平成25年度の研究予定を一部先取りする形で行った。これは、平成24年度に予定していた解析をする上で、降水変動に伴う広域循環場の変動を先に理解したほうが方が都合がよいという判断からである。これにより、季節内変動の各位相に伴う循環場の特徴から、その環境下で卓越しそうな雲・降水システムの形態がより浮き彫りになり、解析の指針が絞られた。その意味では、当初予定したいた平成24年度の解析は計画とはやや異なるものの、全体の計画としては非常に重要かつ意義のある結果をもたらしたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度はH24年度の結果を国際誌に投稿する。解析に関しては、当初平成24年度に予定していた解析を含め、インド北東部、バングラデシュ、ミャンマー周辺の季節内変動の各位相に対応する日変化と地形の統計的な関係を詳細に解析を予定である。また、TRMMを用いた降水特性の解析も行い、投稿論文の作成を行う
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は結果の国際誌への投稿が間に合わなかったため、次年度への繰越が費用が生じた。基本的には予定していた論文投稿料としてH25年度にそのまま繰り越す予定である。
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