2012 Fiscal Year Research-status Report
高解像度日本近海モデルを用いた、沿岸・外洋間の海水交換に関する研究
Project/Area Number |
24740323
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
坂本 圭 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 研究官 (60589860)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 海洋物理 / 沿岸モデリング |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本沿岸海洋の変動に強く影響を与える、沿岸・外洋間の海水交換過程を、海洋モデルを用いて包括的に明らかにすることである。そのためには、沿岸海況の季節発展を現実的に再現したうえで、潮汐による移流や沿岸前線の不安定など、海水交換を引き起こす様々な力学過程の表現が可能な日本近海モデルが必要である。 本年度は、気象研究所で開発を進めている高解像度日本近海モデルに必要な高度化を施すことによって過去に例のない、海水交換を陽に表現できる海洋モデルを開発した。行った主要な高度化は、「潮汐スキームの組み込み」と「沿岸海洋に適した混合スキームの導入」の2点である。潮汐は、これまでの海洋大循環モデルではあまり重要視されてこなかったが、沿岸の海水交換では主要な役割を果たすと考えられ、本研究においては不可欠な力学要素である。また、沿岸域における海水変質を表現するのに適した混合スキームの導入も、現実的な沿岸海況の再現のために重要である。 さらに、開発した日本近海モデルを、季節変動を含む大気強制で駆動し、1年間の長期シミュレーション実験を行った。その結果の解析から、日本周辺全域において、現実的な海況の季節発展と同時に、高い精度の潮汐や、非常に変動に富む沿岸の小スケール不安定現象も表現されたことが明らかになった。このような沿岸海洋シミュレーションはこれまでに例がなく、沿岸モデリングという点からも重要な成果であるといえる。今後、本シミュレーション結果を解析することで、日本周辺の海水交換過程をはじめて包括的に明らかにできると期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の1年目の課題とした、解析に用いるモデルの開発と長期シミュレーションの実行は順調に達成できた。モデル開発の課題とした、「潮汐スキームの組み込み」と「沿岸海洋に適した混合スキームの導入」については、気象研究所のモデルを開発メンバーと協力して完了することができた。特に、潮汐スキームは、既存のスキームでは必要な精度が得られなかったため、新しいスキームの開発を行い、モデル中で日本沿岸の潮汐を高い精度で導入することができた。この成果は論文としてまとめ、現在、論文誌(Ocean Science)に投稿中である。 また、高度化した日本近海モデルを用いた長期シミュレーションについても、既にほぼ終わっている。現在、結果の解析を進めているところであるが、日本沿岸海洋の季節発展を十分に現実的に再現した結果が得られている(本結果についてシンポジウムで発表も行った。)。このように、1年目の課題は当初の予定どおり達成されており、これから海水交換に関する具体的な解析を進められる状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目も、当初の計画に従って研究を進める。つまり、1年目に行ったシミュレーション実験を基に、日本沿岸全域における海水交換の定量的なマッピングと基本的な力学解析を以下の手順で行う。 1. 実験出力を利用してパッシヴ・トレーサー流し実験を行い、モデル中の海水交換を可視化する。 2. 海水交換の定義と評価方法を検討したうえで、トレーサー流し実験を基に、日本沿岸全域で海水交換量のマッピングを行う。その結果を整理し、海水交換量の地域・季節依存性を明らかにする。 3. 海水交換量の時空間分布を引き起こす力学的な要因を明らかにする第一歩として、まず、大スケールの流れ場の変動との関連性について検討を行う。具体的には、(a) 黒潮、親潮といった外洋の大規模な流れの変動、(b) 日本の周囲を流れる沿岸流の季節変動、(c) 中規模渦の接岸、といった流れの変動について影響を調べる予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は主に研究発表に使用する。 ・海外発表:2014年2月にアメリカ、ホノルルで開催される「Ocean Science Meeting」で成果の発表を行う。 ・国内発表:日本海洋学会と、沿岸モデリングの研究実績がある大学での発表を行いたい。 ・論文発表:長期シミュレーションの解析結果をとりまとめ、論文誌に投稿する予定である。 ・その他:発表や議論の際にシミュレーション結果をアニメーションで示すためのデバイスとして、タブレットPCの購入を予定している。
|
Research Products
(2 results)