2012 Fiscal Year Research-status Report
地球磁場形状に適合した全球電離圏モデルによる数百kmスケール擾乱要因の研究
Project/Area Number |
24740336
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
陣 英克 独立行政法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室, 主任研究員 (60466240)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 超高層大気 / シミュレーション / 中層大気 / 電離圏 / 大気結合 / 計算科学 / 宇宙天気 / データ同化 |
Research Abstract |
本研究では、これまで開発してきた大気圏-電離圏統合モデルを高精度化し、現実に観測されるSED、MSTID、LSWSなど数100kmスケール電離圏現象の再現を目指す。そして、全球統合モデルの利点を活かし、現象の全貌解明に迫る。本年度は以下の研究開発項目を実施した。 (1)-i. 既存の電離圏モデルの整備: 本研究で拡張を予定している電離圏モデルは、長年に渡って複数の開発者が「上書き式」に更新を繰り返してきたため、内容把握が困難な上に計算環境や仕方の変更に応じて計算エラーが生じる状況であった。そこで、本研究の第1段階としてコードの中身を精査して構成や細部を整備し、各ルーチンのオブジェクト化を行った。これにより、コードの可読性と拡張性が改善されると同時に計算も安定化し、本研究の開発基盤が整った。 (1)-iv. 高空間分解能化: 電離圏モデルの空間分解能を可変にする拡張を行い、当初の5倍となる分解能(経度1度×緯度1度)の計算も可能となった。これにより、分解能上は数100kmスケールの電離圏現象を再現する目標に近づいた。一方で計算量が増大するため、並列計算技術(MPIおよびSMP)の導入も併せて行い、現時点で当初の6倍程度の計算速度に改善した。 (2)-ii. 現実指向型シミュレーションの実行と観測との比較: 大気圏-電離圏統合モデル(拡張前のバージョン)の低層部分に気象庁から提供される客観解析データを組み込み、現実ベースの大気圏・電離圏シミュレーションを実施した。そして同期間の衛星観測との比較を行い検証した。特に2009年1月に発生した成層圏突然昇温のような大規模なイベントに関して、中層大気から電離圏までの特徴的な振る舞いがモデルで再現されており、データ解析を通じて大気間の結合過程を明らかにすることが出来た(Jin et al., 2012; Liu et al., 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書には平成24年度の研究実施計画として、3つの項目「(1)-i. 既存の電離圏モデルコードの整備」、「(1)-ii. 地球磁場形状に適合したシミュレーション格子の開発」、「(1)-iii. 高高度領域のダイナミクスの導入」を挙げた。このうち、「(1)-i. 既存の電離圏モデルコードの整備」については完了している。一方、平成24年度残りの2項目については研究を開始したばかりであるが、これは平成25年度の研究実施計画として挙げた「(1)-iv. 高空間分解能化」と「(2)-ii. 現実指向型シミュレーションの実行と観測との比較」を先行して進めたことによる。また、後者については予期していなかった成果が得られ、複数の論文の出版に至った。したがって、研究計画の順番は当初の予定と異なるものの、全体としては概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、平成24年度の研究実施計画のうち未完了の項目を加えて以下を実施する予定である。 (1)-ii. 地球磁場形状に適合したシミュレーション格子の開発: 電離圏プラズマの運動および電流系は磁力線の方向に関して非対称であるため、モデルとしては計算格子を磁力線に沿って配置すると物理過程を正確に再現し易くなる。そこで、国際標準磁場モデル(IGRF)を利用し、現実の地球磁場形状に適合する座標系を新電離圏モデルと電気力学モデル(電流系を解く要素モデル)に導入する。 (1)-iii. 高高度領域のダイナミクスの導入(差分方程式・スキームの変更): 現電離圏モデルを含む従来の全球電離圏モデルは、伝統的に慣性項を省略し、近似流体式が用いられてきた。この手法ではF層高度以上で数値的に安定しないので、人工的な項を加えて発散を抑える必要があり、高度が高くなるとプラズマのダイナミクスを表現できない。そこで、時間微分項を取り入れた新たな流体差分スキームを検討し、導入する。 (2)-i. モデルの検証(モデル間比較): 本研究の電離圏モデルと他のグループの電離圏モデルに同じ場(太陽放射強度、熱圏組成・風速場、ダイナモ電場)を入力し、シミュレーションを実施する。その結果を比較検証し、モデルの改良につなげる。 (2)-ii. モデルの検証(現実指向型シミュレーションの実行と観測との比較): 平成24年度に引き続き、気象再解析データを導入した大気圏-電離圏統合シミュレーションを実施する。そして、同期間の観測と比較し、(1)のモデル開発による高精度化の検証と現象の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(9 results)