2012 Fiscal Year Research-status Report
白亜紀アジアの哺乳類相変遷:真獣類最初の多様化時期を探る
Project/Area Number |
24740349
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
楠橋 直 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (70567479)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 哺乳類 / 初期進化 / 真獣類 / 中生代 / 白亜紀 / アジア |
Research Abstract |
本研究はアジアにおいて真獣類が哺乳類相の主要メンバーとなり始める前期白亜紀の後半に哺乳類相がどのように移り変わったのか明らかにすることが目的である.そのために,1)標本の収集,2)標本の観察と分類学的検討,3)他産地・地域の既存の標本との比較の3点に重点をおいて研究を進める. 本年度は中国科学院古脊椎動物與古人類研究所 (IVPP) の協力のもと,中国遼寧省で3週間弱の発掘調査をおこない,20点以上の前期白亜紀哺乳類化石標本を採集した.これらの標本のうち,比較的保存の良さそうなものから順にクリーニングが進行中である.またIVPPに保管されている,過去の調査で見つかった標本観察をおこない,特に真獣類化石についての分類学的検討に着手した.さらにその予察的内容に関して学会発表をおこなった.日本の化石についても研究を進めている.石川県白山市の手取層群桑島層産の標本は借り出し,現在クリーニングと標本観察をおこなっている.兵庫県篠山市の篠山層群“下部層”産標本に関しては分類学的検討をおこない,その結果を学術誌に投稿し,受理され,既にオンライン公開されている. 他地域の標本との比較としては,本年度はオーストラリアのメルボルン博物館で,前期白亜紀哺乳類標本の観察をおこなった.そのときの観察結果は一部篠山層群産哺乳類の論文でも利用している.また新たな産地開拓を目指し,ニュージーランドにおいて南島を中心に地層観察をおこなった.現時点で哺乳類化石は発見できていないが,可能性のありそうな地点は複数あることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,1)標本の収集,2)標本の観察と分類学的検討,3)他産地・地域の既存の標本との比較の3点に重点をおくが,本年度そのいずれも順調におこなうことができた.中国遼寧省での調査で20点以上の哺乳類化石標本が得られたことは,前期白亜紀哺乳類化石の発掘調査としては大成功と言って良い.中国産・日本産の標本観察も順調に進んでいる.日本産のものの一部は研究成果を既に論文にできたし,中国産のものの一部に関しても近いうちに論文化する方向で現在中国の研究者と調整中である.他産地の標本との比較ではオーストラリアにおいて,これまでに見つかっている全ての前期白亜紀哺乳類化石を観察することができた.本研究を進める上で興味深い標本も数多く含まれており,今回の観察結果は今後の研究に大いに役に立つことは間違いない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も基本的には1)標本の収集,2)標本の観察と分類学的検討,3)他産地・地域の既存の標本との比較の3点に重点をおいた研究を進める.平成25年度には標本収集のため再び中国遼寧省での発掘調査をおこなう予定で,中国側の研究協力者と日程の検討を始めるところである.最終年度も調査は継続する予定である.標本観察もこれまで通り進める.他地域の標本との比較については,平成25年度には大連の博物館を訪問したいと考えており,近いうちに連絡をとる予定である.これらに加えて最終年度に向け各分類群における系統解析の準備を進めていき,最終的には動物相変遷の議論へと繋げていきたいと考えている.またニュージーランドでの化石産地開拓にも引き続き挑戦したい.現在のところ南半球の化石記録は圧倒的に不足しており,南半球における新たな化石発見は本研究の議論に重要な情報を提供するのみならず,哺乳類進化史の研究そのものに対して大きな意義をもつからである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Journal Article] A new Early Cretaceous eutherian mammal from the Sasayama Group, Hyogo, Japan2013
Author(s)
Kusuhashi, N., Tsutsumi, Y., Saegusa, H., Horie, K., Ikeda, T., Yokoyama, K., and Shiraishi, K.
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Journal Title
Proceedings of the Royal Society B
Volume: 280
Pages: 未定
DOI
Peer Reviewed
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