2014 Fiscal Year Annual Research Report
カンブリア紀礁生態系から探る温室期の海洋生態系と地球表層環境の変遷
Project/Area Number |
24740350
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
足立 奈津子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (40608759)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 層位・古生物学 / カンブリア紀 / 礁生態系 / 微生物岩 / 造礁生物 / 古環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,モンゴル国ザブハン地域と北中国山東省地域から産出するカンブリア系礁に関する研究を主に進めた. (1) ザブハン地域からは,樹状や層状などの成長形態を示す多様な古杯類と共に石灰質微生物類によって形成されたカンブリア紀第二世の礁が明らかになった.これらは,古杯類大繁栄当時の礁である.顕生累代最初期に登場した造礁骨格生物がどのような礁を構築したのか.また,石灰質微生物類とどのような古生態学的関係を維持していたのかを明らかにする上で重要である. (2) 山東省地域に分布する張夏層 (カンブリア系第三統) には,多様な石灰質微生物類によって形成された「微生物類礁」が発達する.特に,九龍山セクションには,主に石灰質微生物類Epiphytonによって形成された巨大なドーム状構造が発達する.ドーム状構造は,石灰質微生物類が,光に規制されながらも,各微環境に応じて占有面積を最大限拡大するように成長した結果である.また,ドームの成長・中断は,地域的な海水準の変動に影響受けたことも明らかになった. (3) さらに,張夏層から,イシ海綿によって形成された小規模礁が産出することが明らかになった.礁は,柱状の成長形態を示す海綿の表面で,石灰質微生物類が上方,側方・下位方向へと成長することで形成された.但し,海綿は,微生物類による分解作用と続成作用の結果十分保存されていない.古杯類の消滅以降,微生物類のみの礁 (ストロマトライト,スロンボライト礁) がカンブリア紀第三世から芙蓉世にかけて持続的に発達したと考えられてきた.しかし,今回の北中国の事例は,イシ海綿が関与した礁は,より早く,広域的に発達していた可能性を示唆する. 以上の成果は,日本古生物学会や日本地質学会にて発表をおこなうとともに,国際学術誌上で発表した.
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