2012 Fiscal Year Research-status Report
獣脚類恐竜における頭部(特に脳、内耳)及び頸部進化の形態学的・発生学的研究
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24740351
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
對比地 孝亘 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (70597343)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 獣脚類 / 進化 / 脳 / ヘテロクロニー |
Research Abstract |
本研究は大きく分けて、(1)ニワトリ胚の発生過程に関する作業と(2)現生および化石の標本についてのデータ収集の2つからなる。まず(1)については、平成24年度は、申請者の機関の異動にともない、新研究室の立ち上げが必要となった。それに伴い、申請研究を始めるにあたっての基盤整備に力を注いだ。胚発生を行わせるインキュベーターや透明標本制作のための器具やCTスキャンデータを解析するための設備を整え、平成25年度初頭から本格的な実験作業が行えるように準備を行った。(2)については、所属機関の研究者海外派遣制度などを利用し、まず米国The Field Museumにおいて、現生ワニ類胚の透明標本観察を行い、頸部骨格の骨化シークエンスについてのデータ収集を行った。さらに、同米国のCarnegie Museum of Natural History, American Museum of Natural History, South Dakota School of Mines and Technologyを訪問し、ジュラ紀から白亜紀にかけてのさまざまな獣脚類恐竜の脳函および頸部骨格の観察、データ収集を行った。過去に蓄積してきたデータと合わせ、申請者のこの時代の分類群についてのデータ収集についてはほぼ完了した。さらに、ワニ類数体およびカメ類一体を解剖することにより、頸部筋肉系の比較のための形態学的データを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
最大の理由は、申請者は平成24年に地球惑星科学系の新たな機関に異動したことにより、生きた胚をあつかい、また標本を解剖するための生物学系の設備を整えた新研究室の立ち上げそのものに大きな労力と時間を要したことである。現所属機関では、脊椎動物の生体あるいは死骸を扱っていた研究室はなかったため、本科研費により購入、整備した機器以外にも、ドラフト等の基礎設備の整備をするために多くの時間がかかった。特に発生関連の研究について、研究機器の整備に終始する結果となった。さらに、現所属機関において研究以外の業務が大幅に増え、申請書制作時の予想よりも研究そのものに費やせる時間が大きく減ったことも、この遅れに大きく寄与している。いずれの場合も研究作業そのものに失敗した訳ではないため、設備の整った平成25年度については、研究予定がスムースに進むものと予測される。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成24年度に実行できなかったニワトリの胚発生とその標本のCTスキャン撮影について、速やかにスタートする。設備は完備したので、この作業は問題なく進められると考えられる。また、これらの胚における中軸筋肉系の解剖も平行して行う。さらに近年、ヨウ素溶液を標本に浸潤させることにより、CTスキャン画像において軟組織間の区分を可能にする手法が考案された。この技術を使うことにより、多くの解剖学的情報を取得できる可能性あるため、実際の解剖と併用することにより作業の効率化をはかる。また予定していた海外の博物館での、鳥類の発生段階の透明標本及び化石の恐竜標本のついての観察を行い、これらのデータを基にした発生や進化に関するシーケンス解析を速やかに行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費の繰り越しは、平成24年度にニワトリの胚発生が実行できなかったこと、及び予定していた南米への標本調査旅行が多忙なため実行できなかったことにより生じた。平成25年度にはニワトリの有精卵を購入し、上記のような胚発生とその解剖等を行う。また、元来平成25年度に計上していた旅費と合わせ、南米への標本調査旅行を実行する予定である。
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