2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24740352
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
興野 純 筑波大学, 生命環境系, 講師 (40375431)
|
Keywords | フェリハイドライト / ヘマタイト / ナノ鉱物 / PDF法 / 相転移 / 粒径サイズ |
Research Abstract |
本研究の目的は,原子対分布関数(PDF)法を用いて,フェリハイドライトの粒径が増加するにしたがってヘマタイトに相転移していくメカニズムを解明することである.昨年度の実験で浮き彫りとなった問題点に対して,今年度は高純度のフェリハイドライトを合成することで改善できると考えた.XRD測定の結果,合成物はゲーサイトがまったく含まれていない高純度試料となった.実験は,KEK-PFのBL8Bで行った.X線全散乱測定の結果,4時間加熱を行った試料からヘマタイトの回折ピークが出現し始め,48時間で完全なヘマタイトに変化した.PDF法による結晶構造解析の結果,粒径サイズの変化は加熱時間5分から2時間では3.5 ~4.0 nmであったが,ヘマタイトが出現した加熱時間4時間からは急激に増加し,12時間では10 nm以上に成長していた.フェリハイドライトの単位格子は,粒径サイズの増加とともにa,b軸長が単調に減少し,単位格子体積は減少した.一方,c軸と結合距離,結合角度には顕著な変化は観察されなかった.このことから,フェリハイドライトからヘマタイトへの相転移メカニズムは,次のように考えられる.フェリハイドライトとヘマタイトはともに6個のFe配位多面体が環状に結合しa-b面に平行に配列した層状構造である.フェリハイドライトとヘマタイトの構造の違いは,ヘマタイトはFeO6八面体の6員環からなるのに対し,フェリハイドライト には3個のFeO4四面体が含まれている.フェリハイドライトの単位格子は,粒径サイズの増加とともにa軸,b軸長が単調に減少する.つまり,FeO4四面体を含む6員環が収縮することで,FeO4四面体周囲の酸素原子間距離も短くなり,FeO4四面体からFeO6八面体への配位数変化を引き起こす.そして, フェリハイドライト のFeO4四面体がすべてFeO6八面体に変化することで,ヘマタイトに相転移している.
|