2012 Fiscal Year Research-status Report
パルスレーザーとダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧高温下の水の熱拡散率計測
Project/Area Number |
24740356
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
木村 友亮 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特定研究員 (50624540)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 水 / 高圧高温実験 / 相転移 / 熱拡散率 |
Research Abstract |
高圧高温下の水の熱拡散計測に必要なレーザー光学系と計測系の開発を行った。水は高圧高温の環境下で金属と反応することが確認されている。この反応を防ぐためには水にレーザー光を吸収させて直接的に加熱を行う必要がある。本研究では水が高い吸収係数を持つ炭酸ガスレーザーを採用した。このレーザーを用いて加熱領域を小さく絞ることで試料のみの加熱に成功し、水と他の物質との反応を未然に防ぐことができた。計測のために、試料両側から観察する監視カメラと分光器を配置したことで、加熱中の試料のその場観察と温度計測が可能となった。標準光源を使って分光器の温度データを校正し、連続光レーザーによって加熱された試料温度を約10 %の誤差で計測できることを確認した。 最終的には連続光レーザーをパルス化する必要があるが、この準備も順調に進んでいる。当該年度にレーザーをパルス化するための変調器を購入した。レーザーをこの変調器に通すことで数100ナノ秒のレーザーパルスを作成できる。パルスレーザーによって加熱された試料の温度は、大阪大学レーザー研と協力して高速高感度カメラと分光器をカップリングして計測する予定である。 上記のように開発された加熱システムを用いて、55-72 GPaの範囲の氷の融点の計測に成功した。得られた結果は過去のGoncharov et al., Phys. Rev. Lett. (2005)の結果と一致していた。この事実は開発された加熱システムが正常に機能していることを示している。そして、目標の物性計測を行うための前提として理解すべき水の相を解明できたという意味でもこの結果は本研究において重要な実績として挙げられる。さらに、この結果は天王星と海王星内部の水の状態を明らかにし、惑星科学の観点からも重要な知見をもたらした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は10-100GPa, 1300-3000Kの圧力温度範囲の液体と超イオン状態の水の熱拡散率の決定である。この目標達成のために、当該年度では実験環境を整えることを予定していた。試料加熱用の炭酸ガスレーザーを使って氷の加熱に成功した。また、分光器を用いて加熱された氷の輻射スペクトルの取得に成功し、プランクの式に則って温度を算出できた。そして、現時点では連続光レーザーを用いているが、パルス成形するための変調器は既に用意され、現在、このデバイスをシステムに加えるための光学系を設計している段階である。以上のことから、実験環境は順調に整いつつある。加えて、目的の圧力温度条件の氷の融点を計測することに成功した。この結果は当初の予定を先行して得られた重要な成果である。しかしながら、炭酸ガスレーザーを用いることで水の熱拡散率を計測するための試料条件を見直す必要がある。以上のように、予定を上回る成果とやや遅れている検討事項を合わせて考慮すると、全体として、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 連続光レーザーをパルス化する。レーザーを変調器に通すことで数100ナノ秒のパルスレーザーを生成することができる。このパルス化を実現するための光学系を設計し、現在の加熱システムに新たに加える。 2. 高速高感度カメラをパルスレーザー加熱用の温度計測のために設置する。このカメラを分光器に備え付けることで数ナノ秒以下の時間分解で温度計測が行える。このカメラを使って瞬間的に加熱された試料の温度履歴計測を試みる。 3. MgOやMgSiO3といったテスト物質の融点を計測する。試料が液体から固体へ相転移することで温度履歴データに不連続な変化が現れることが予想される。この変化に対応する温度を融点とし、過去に得られた結果と比較することで本実験の妥当性を評価する。 4. 水の超イオン状態と氷との相境界を決定する。冷却過程の試料の温度履歴を計測し、目的の温度圧力条件における水の相境界の決定を試みる。 5. 温度履歴の傾きから熱拡散率の決定を試みる。炭酸ガスレーザーを用いるために試料条件を当初より変更する必要がある。適切な熱吸収体を決めるためのテスト実験を行い、実験が可能な試料を作成した上で熱拡散率の計測を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ダイヤモンドアンビルとして40万円。光学素子として20万円。 学会出張費として30万円。大阪大学への出張費として10万円。 研究成果投稿料として8万円。印刷費として6万円。
|
Research Products
(8 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] テラパスカル領域の溶融ダイヤとポストダイヤに関する実験的研究2012
Author(s)
尾崎典雅,Gianluca Gregori, Alessandra Benuzzi-Mounaix, 犬伏雄一,関根利守,佐野智一,木村友亮,宮西宏併,浦西宏幸,Michel Koenig, David Riley, 佐野孝好,坂和洋一,兒玉了祐
Organizer
第53回高圧討論会
Place of Presentation
大阪大学会館
Year and Date
20121107-20121109
-