2013 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理電子状態計算法を用いた蛇紋岩鉱物の弾性特性
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24740357
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
土屋 旬 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 准教授 (00527608)
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Keywords | 高圧鉱物物性 |
Research Abstract |
本研究は地球深部へ水を運搬する役割を担うと考えられている蛇紋岩鉱物の弾性特性を第一原理電子状態計算法を用いて決定し、蛇紋岩鉱物の地球内部における地震波速度を見積り、地震波の観測データとの比較により地球内部における蛇紋岩鉱物の存在状態を明らかにすることを目的としている。 本年度は蛇紋石の中でも高温相であるアンチゴライトの弾性についての計算を重点的に行った。アンチゴライトは沈み込むスラブ条件下で安定であり、カンラン石と水の反応により生成されるため、水を運搬するもっとも重要な役割を担うと考えられている。しかし、単位格子中に存在する原子が約300個程度と、非常に複雑な構造を持つため、第一原理電子状態計算法を用いて計算するには多くの計算機資源と時間を要する。さらに、アンチゴライトは温度や圧力に依存してモジュレーション(m=13-18)を変化させている可能性が示唆されているが、モジュレーションの違いがどのように弾性に影響を及ぼしているかは不明である。よって本研究では二つの異なるモジュレーション構造(m=16, 17)について構造を決定し、弾性定数を決定した。 結果、二つのモジュレーション構造について圧縮曲線や弾性について定性的にはよく似た変化を示すが、弾性異常を示す圧力条件が異なるなど、定量的には明確な差異を示すことが判明した。さらに、エンタルピーの比較により、高圧下においてはモジュレーションの数が大きい構造のほうがより安定であることが判明した。計算により得られた蛇紋石の弾性定数を基に様々な結晶方位に伝播する地震波速度を見積もった結果、琉球や東北地方における観測でみられる大きな偏向異方性が、蛇紋石の結晶格子選択配向により説明できることを明らかにした。
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