2013 Fiscal Year Research-status Report
太陽系初期の固体物質進化:彗星塵と小惑星物質の比較鉱物学
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24740358
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小松 睦美 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (50609732)
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Keywords | 隕石 / 彗星 / 炭素質コンドライト |
Research Abstract |
本研究は、炭素質隕石及び彗星物質の鉱物学的特徴と分光学的特徴から、太陽系初期の小天体の進化の条件に制約を与えることを目的としている。 今年度は、これまで発見された隕石の中でも、もっとも始原的な隕石の一つとして知られる、Y-81020隕石(炭素質COコンドライト)中と、母天体の異なる、すなわち様々な程度の2次変成を経験した隕石Bali, Y-86009, Efremovka, Y-86751(CVコンドライト), NWA1152(CR/CVコンドライト), 彗星粒子(C2067,2,112,1)の比較を行った。 化学的・組織的特徴からのアプローチとして、特に、それぞれの炭素質コンドライト中に含まれるAOA(Amoeboid Olivine Aggregates;かんらん石集合体)に含まれるかんらん石に着目した。それぞれの隕石に含まれるAOAかんらん石の化学組成を比較した結果、隕石(彗星粒子)ごとにMnやCrの微量元素に大きな違いがあることが分かった。平衡凝縮計算モデルを合わせると、それぞれの母天体が異なる温度から凝縮した鉱物情報を保存していることが示唆された。このことは、隕石母天体である小惑星は、形成時の位置により、それぞれ異なる温度域から凝縮した物質を取り込んだことを意味している。 本研究で用いた隕石について、UV-NIR範囲での拡散反射スペクトルを比較したところ、Allende隕石は、他の隕石に比べ、かんらん石に起因するFeO吸収が明確に表れることが分かった。このことは、母天体での変成過程が、反射スペクトルに変化を生じていることを示している。 以上の結果を、地球惑星科学連合大会(2013年5月20~24日)、第46回南極隕石シンポジウム(2013年11月14-15日、国立極地研究所、東京)、日本惑星科学会秋季講演会(2013年11月20-22日)、The 46th Lunar and Planetary Science Conference (2014年3月17-21日、アメリカ、ヒューストン)にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、隕石中のolivineに含まれるMn量に着目し、多くの隕石について比較研究を行った。隕石中のolivineのMn量については、凝縮計算モデルは発表されているにも関わらず、実際の隕石に応用した例は数が限られている。本研究では、変成度の異なる数多くの隕石を統計的に分析することで、太陽系星雲からの凝縮過程と変成過程についてのより詳細な考察を行った。また、彗星粒子のMnについての考察も本研究独自のものである。 この結果は、本研究課題の目的である「太陽系初期の固体物質進化」を議論する上で重要な情報であり、本研究の順調な進展を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに、数多くの隕石、彗星粒子について、統計的な鉱物学的研究を行った。また同じ隕石種でも、変成度の違いにより反射スペクトルの違いがあることが明らかになった。過去の研究において、隕石種ごとの反射スペクトルの違いは多くの議論がされているが、変成度と反射スペクトルの関連性については不明な点が多い。本研究では既に鉱物学的特徴を基に変成度を決定しており、同じサンプルを用いた反射スペクトル分析を行うことで、小惑星のリモートセンシングとの議論を展開する予定である。また、これまでの結果を早急に論文に取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用額が当初の予定を下回ったため。 研究計画通り、次年度研究費と合算して研究遂行費用として支出予定である。
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Research Products
(11 results)