2012 Fiscal Year Research-status Report
Re-Os放射壊変系による黒鉱・石油鉱床の生成年代決定と成因の解明
Project/Area Number |
24740360
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野崎 達生 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, 研究員 (10553068)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 黒鉱鉱床 / 石油鉱床 / Re-Os同位体 / 火山性塊状硫化物鉱床 / 日本海 / 背弧拡大 / 地球化学 / 全岩化学組成 |
Research Abstract |
本科研費に関わる研究活動として,今年度は黒鉱鉱床の野外調査および鉱石試料採取,Re-Os同位体分析におけるRe-Osブランク量の低減化,黒鉱鉱床のモダンアナログである沖縄トラフ海底熱水鉱床の記載学的・地球化学的研究に着手した.また,2箇所の黒鉱鉱床および石油鉱床についてRe-Os同位体分析によるアイソクロン年代決定を試みた.初年度では黒鉱鉱床と石油鉱床の生成年代決定を成功裏に行うに至っていないが,同位体分析の過程とその結果から問題点を洗い出し,解決策を可能な限り検討した (詳細は「現在までの達成度」と「今後の研究の推進方策」の欄を参照). 上記の黒鉱鉱床および石油鉱床の年代決定に向けて,初年度 (2012年度) はRe-Os同位体分析の開発・改善に関する査読有り論文が2編掲載された (以下,主著・共著を含む).また,黒鉱鉱床や沖縄トラフ海底熱水鉱床に関わる研究などに関して,査読無し論文が2編,国際会議発表が5編,国内学会発表が19編掲載された.次年度も複数の学術論文および多数の学会発表が掲載されるように,鋭意研究活動を進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本列島グリーンタフベルトに胚胎する黒鉱鉱床 (島根県鰐淵鉱床,鵜峠鉱床,石見鉱床,秋田県北鹿地域の小坂鉱床,相内鉱床,観音堂鉱床) について野外調査を行い,塊状硫化物鉱石試料および硫酸塩鉱石試料の採取を行った.また,黒鉱鉱床の成因に精通している東北大学山田亮一博士との共同研究を開始し,松峰,馬場目,光沢,水沢鉱床の硫化物鉱石試料についても分与して頂いた.これらの鉱石試料について,鋭意研磨片や粉末試料を作成中である.これらの鉱床のうち,先行研究 (Terakado, 2001a, 2001b) においてRe-Osアイソクロン年代が報告されている島根県鰐淵鉱床および秋田県相内鉱床のRe-Os同位体分析を約25試料行った.当初の期待に反し,どちらも先行研究に比べてアイソクロンの横軸である187Re/188Os比のバリエーションが乏しく,直線性の良好なアイソクロンを引くことができなかった.また,予想される鉱床の生成年代が中新世と若く,放射壊変起源の187Osが少ないためにアイソクロンの縦軸のバリエーションが乏しいことも直線性の良好なアイソクロンを得られなかった原因の1つであると考えられる. 黒鉱鉱床と“ほぼ同時期”に生成している日本海側の油ガス田についても,秋田県由利原油田および申川油田の原油試料についても,約10試料について予察的にRe-Os分析を行った.原油試料についても,先行研究 (Selby and Creaser, 2005) において報告されているような直線性の良好なアイソクロンを得ることができなかった.しかし,187Os/188Os比が予想に反して0.3を切る試料が多く,原油生成の熟成作用において,低い187Os/188Os比を有する熱水が関与している可能性を示唆している.すなわち,グリーンタフ地域の油ガス田は無機的に熟成した「熱水性石油」である可能性がある.
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Strategy for Future Research Activity |
黒鉱鉱床および原油試料について直線性の良好なアイソクロンが得られなかった原因として,(1) アイソクロンの横軸である187Re/188Os比のバリエーションが乏しい,(2) 鉱床の生成年代が若いために放射壊変起源の187Osが少なく,アイソクロンの縦軸である187Os/188Os比のバリエーションも乏しい,(3) 同位体比のバリエーションが小さいために低ブランクの分析が必要,(4) そもそも構成鉱物ごとにOs同位体比初期値が一定でない可能性があることが挙げられる.(1),(2) については, ICP-MSによる鉱石試料の微量元素分析を追加し,Re-Os濃度との相関関係から,同位体比のバリエーションの原因を明らかにすることで対応する.(3) については,実験試薬や各工程のブランクを再検証することで,低ブランク化に成功した (後藤・野崎ほか,2012).また,現世の海水と熱水の187Os/188Os比はそれぞれ0.12と1.06であり,海底熱水鉱床の構成鉱物のOs同位体比は,海水-熱水のミキシングによりこれらの間の値を取り得ると考えられる.アイソクロンの横軸・縦軸にバリエーションが少ない場合,Os同位体比初期値のばらつきがアイソクロンの直線性を乱す原因になり得るので,背弧の海底熱水鉱床を起源とする黒鉱鉱床についても,各鉱物の187Os/188Os比の検証から必要である.そのため,まずは黒鉱鉱床のモダンアナログである沖縄トラフの海底熱水鉱床を対象とし,構成鉱物のRe-Os組成を明らかにしていく予定である. 原油試料について,初年度の予察的なRe-Os分析は逆王水分解を行ったため,次年度の分析では有機物に富む物質に適したCrO3-H2SO4分解を行い,年代決定を試みる.石油試料の年代決定が困難でも,187Os/188Os比を用いて石油鉱床の成因に新たな観点から迫ることが期待される.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) Re-Os同位体分析に伴う消耗品類 (物品費)⇒カリアスチューブ,テフロンジャー,高純度試薬,Ptリボン,ガラス器具類,炭酸ガス・酸素ガスなど (2) 国内旅費・学会⇒日本地球惑星科学連合大会 (幕張メッセ),資源地質学会 (東京大学),日本地球化学会年会 (筑波大学).秋田県北鹿地域に胚胎する黒鉱鉱床の野外調査,福島県・山形県・新潟県の境に位置する黒鉱鉱床の野外調査,沖縄トラフ海底熱水鉱床の研究航海 (3) 国外旅費・学会⇒Society of Economic Geologyのbiennium meeting (ウプサラ,スウェーデン) (4) その他⇒投稿論文の英文校閲
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Research Products
(29 results)
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[Presentation] Post-drilling hydrothermal vent and associated biological activities seen through artificial hydrothermal vents in the Iheya North field, Okinawa Trough2013
Author(s)
Takai, K., Kawagucci, S., Miyazaki, J., Watsuji, T., Ishibashi, J., Yamamoto, H., Nozaki, T., Kashiwabara, T. and Shibuya, T.
Organizer
International Symposium on Underwater Technology 2013
Place of Presentation
Tokyo, Japan
Year and Date
20130305-20130308
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[Presentation] Experimental study on hydrothermal alteration of dacite collected from the Hatoma Knoll, Okinawa Trough, Japan2012
Author(s)
Masaki, Y., Shibuya, T., Yoshizaki, M., Nozaki, T., Suzuki, K. and Takai, K.
Organizer
AGU Fall Meeting 2012
Place of Presentation
San Francisco, America
Year and Date
20121203-20121207
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[Presentation] Post-drilling hydrothermal vent and associated biological activities seen through artificial hydrothermal vents in the Iheya North field, Okinawa Trough2012
Author(s)
Takai, K., Kawagucci, S., Miyazaki, J., Watsuji, T., Ishibashi, J., Yamamoto, H., Nozaki, T., Kashiwabara, T. and Shibuya, T.
Organizer
AGU Fall Meeting 2012
Place of Presentation
San Francisco, America
Year and Date
20121203-20121207
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[Presentation] Temporal and depth variation of Os isotope composition in ferromanganese crusts from the Takuyo Daigo Seamount (#5 Takuyo Smt), northwestern Pacific Ocean2012
Author(s)
Tokumaru, A., Nozaki, T., Goto, K. T., Takaya, Y., Suzuki, K., Chang, Q., Kato, Y., Usui, A., Urabe, T. and NT09-02 Cruise member
Organizer
22nd V.M. Goldschmidt conference
Place of Presentation
Montreal, Canada
Year and Date
20120624-20120629
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[Presentation] Temporal and spatial variation in growth rates of Fe-Mn crusts from the #5 Takuyo Smt using osmium isotope compositions2012
Author(s)
Goto, K., Nozaki, T., Suzuki, K., Tokumaru, A., Usui, A., Chang, Q., Kimura, J.-I., Urabe, T. and NT09-02 cruise member
Organizer
日本地球惑星科学連合2012年大会
Place of Presentation
幕張メッセ
Year and Date
20120525-20120525
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[Presentation] Deciphering the chemical evolution of the Cenozoic seawater using ferromanganese crust2012
Author(s)
Nozaki, T., Goto, K., Tokumaru, A., Takaya, Y., Suzuki, K., Chang, Q., Kimura, J.-I., Kato, Y., Usui, A., Urabe, T. and NT09-02 Cruise Member
Organizer
日本地球惑星科学連合2012年大会
Place of Presentation
幕張メッセ
Year and Date
20120525-20120525
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[Presentation] Diversity of seafloor massive sulfide ores in the Okinawa Trough2012
Author(s)
Ishibashi, J., Ooki, M., Shimada, K., Nozaki, T., Yoshizumi, R. and Urabe, T.
Organizer
日本地球惑星科学連合2012年大会
Place of Presentation
幕張メッセ
Year and Date
20120521-20120521
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[Presentation] Growth rate determination of ferromanganese crusts from the Takuyo Daigo Seamount using an osmium isotope stratigraphy2012
Author(s)
Tokumaru, A., Nozaki, T., Suzuki, K., Goto, K., Takaya, Y., Chang, Q., Kato, Y., Usui, A., Urabe, T. and NT09-02 cruise member
Organizer
日本地球惑星科学連合2012年大会
Place of Presentation
幕張メッセ
Year and Date
20120521-20120521
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