2012 Fiscal Year Research-status Report
星間塵表面におけるアンモニア分子の重水素濃集過程の解明と分子雲温度推定への応用
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24740362
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
日高 宏 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00400010)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 同位体分別 / 星間塵表面反応 |
Research Abstract |
アンモニア分子(NH3)は分子雲で存在度が高い分子として知られており,またその重水素化分子(NH3-d)も宇宙空間に存在する重水素(D)/水素(H)原子比に比べ,非常に高い存在度を示すことが知られている.NH3は星間塵表面におけるN原子へのH原子付加反応によって生成されることが明らかになっているが,高濃度のNH3-dの生成過程は不明である.本研究の目的は,NH3-dの存在度の高さは星間塵表面でN原子へH原子およびD原子が逐次付加していく過程で生じる水素および重水素原子の引抜き反応効率の違いから生まれるという予想から,星間塵表面におけるN原子へのHおよびD原子照射実験を行い,アンモニア分子に重水素濃が生じるか検証を行うことである.また,この引抜き反応は表面温度に依存するため,濃集度と表面温度の関係を明らかにし,分子雲の温度計として重水素濃集度の利用可能性を探ることも目的である. 初年度は,高強度N原子源の製作および実験装置への組み込みを行うことを目標とした.高強度N原子源として電子サイクロトロン共鳴型原子源の製作を開始した.高強度のN原子を得るためには,高密度および高温度のプラズマが必要である.そのためには,外部磁場によりプラズマ内の電子を狭い領域に閉じ込め,電子をサイクロトロン運動させる必要がある.マイクロ波発生装置の周波数が2.45GHzに固定であるため,電子をサイクロトロン共鳴条件に合わせるために磁場強度の調整が容易なソレノイドコイルを磁場源の一部に採用することとした.閉じ込め方式として,ビーム軸方向はソレノイドコイルによるミラー磁場,動径方向は永久磁石による六極磁場を採用し,磁場シミュレーションを行った.その結果,電子サイクロトロン共鳴のために必要な磁場を実現するための永久磁石の仕様,およびソレノイドコイルに必要な電流値,巻き数,幾何サイズ等を決定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では,本年度中に高強度N原子源の製作が終了する予定であったが,実際は設計の完了までしか至らなかった.しかし,研究計画からは若干遅れてはいるが,製作は業者に依頼するため,申請者の作業としてはほぼ計画通りであると言える. 計画の遅れの原因は,本年度に実験室内で装置の入れ替えがあり,すべての実験装置を移動・再設定等を行う作業が発生したこと,および,学会運営業務で時間を要する業務をする必要が発生したため,当初計画していたエフォートを費やすことができなかったことだと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
高強度N原子源の設計がほぼ終了しているので,本年度は製作・既存装置への組込みを行う.さらに,高強度の原子線を再結合反応により減少させずに実験領域まで運搬するために,輸送管の素材の変更を検討する.現在は純アルミを用いているが,N原子における再結合反応係数が非常に小さいパイレックスガラスを採用する予定である. 原子源の性能試験を行った後,低温アモルファス氷表面上でN原子へH,D原子を照射する実験を行い,生成される重水素化アンモニアの濃集度の表面温度依存性を決定する実験を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に予算を繰り越した予算額は非常に少額であるため特記する使用用途はないが,次年度の予算と合わせ,研究計画に従い有効に使用していく予定である.
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Research Products
(4 results)