2012 Fiscal Year Research-status Report
海洋生態系・同位体分子種モデルを用いた海洋からのN2O排出を支配する要因の解明
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24740365
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉川 知里 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 特任助教 (40435839)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 同位体分子種 / 海洋生態系 / 一酸化二窒素 / モデル |
Research Abstract |
平成24年度は、西部北太平洋において海洋生態系・同位体分子種モデルを構築するとともに、海洋観測及びN2O関連化合物の同位体・同位体分子種比の測定を行い、N2O生成過程を定性的に把握した。 海洋研究開発機構の海洋地球研究船みらいの2012年6月に行われた西部北太平洋の航海に参加し、亜寒帯と亜熱帯の2つの定点において洋上大気・海水を採取した。得られた試料は研究室に持ち帰り、洋上大気・海水中のN2O濃度とそれらの同位体分子種比を、Toyoda et al. (2002)の手法に従い、同位体質量分析計を用いて測定した。また、海水中のNO3の窒素同位体比については、Yoshikawa et al. (2008)と同様に脱窒菌法を用いてN2Oに変換してからその同位体比を測定した。その結果、亜寒帯の定点では、ほぼ硝化のみによってN2Oが生成していることが明らかになった。一方、亜熱帯の定点では、硝化とともに硝化脱窒の影響もみられた。 また、これら2つの定点に窒素同位体を導入した海洋生態系モデルを適用し、N2O生成過程を導入した。観測結果との比較から、亜寒帯の定点における表層の硝化過程に対するN2O生成割合は、0.22%であることが見積もられた。また、硝化時の同位体分別に関する感度実験の結果、これまでに示唆されていたアンモニア酸化細菌とともに、アンモニア酸化古細菌による硝化が全体の62%以上を占めることが見積もられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成24年度の研究実施計画を、ほぼ計画通りに実施することができたため、今年度は「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。 具体的には、2012年6月に行われた海洋研究開発機構のみらいにおよる研究航海に参加し、予定通り2つの定点における大気・海水サンプルを採取し、平成24年度中に測定も完了した。 また、N2Oアイソトポマーモデルの構築と定点へのモデルの適用・解析も予定通り行い、論文化には至っていないものの、数々の国内・国外学会においてその結果を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は引き続き定点観測及び測定を行うとともに海洋生態系・同位体分子種モデルを検証・完成させ、西部北太平洋におけるN2O生成過程を定量的に解析する。 みらいの2013年7月に行われる予定の西部北太平洋の航海に参加し、平成24年度と同様の定点にて洋上大気・海水を採取する。試料は持ち帰り、平成24年度と同様の方法で洋上大気・海水中のN2O濃度、同位体分子種比、NO3の窒素同位体比を測定する。 得られた測定値とモデル値の比較を行うとともに、①硝化の生成物の割合(N2O:NO3)②脱窒速度③各同位体分別効果を観測の範囲内で変化させる感度実験を行い、構築したモデルを検証する。また、完成したモデルを用いて両定点におけるN2O生成過程を定量的に考察し、論文化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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