2013 Fiscal Year Research-status Report
海洋生態系・同位体分子種モデルを用いた海洋からのN2O排出を支配する要因の解明
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24740365
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉川 知里 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 特任研究員 (40435839)
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Keywords | 同位体分子種 / 海洋生態系モデル / 一酸化二窒素 / 海洋窒素循環 |
Research Abstract |
平成25年度も西部北太平洋の定点において海洋観測及びN2O関連化合物の同位体・同位体分子種比の測定を行い、平成24年度に構築した海洋生態系・同位体分子種モデルを検証するとともに、同モデルを用いたN2O生成過程の解析結果をまとめた。 海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」の2013年7月に行われた西部北太平洋の航海に参加し、亜寒帯と亜熱帯の2つの定点において海水を採取した。得られた試料は研究室に持ち帰り、海水中のN2O濃度とそれらの同位体分子種比を、Toyodaet al. (2002)の手法に従い、同位体質量分析計を用いて測定した。また、海水中のNO3の窒素同位体比についてはYoshikawa et al.(2008)と同様に脱窒菌法を用いてN2Oに変換してからその同位体比を測定した。 その結果、平成25年度の観測結果も平成24年度の結果と同様に、亜寒帯の定点ではほぼ硝化のみによってN2Oが生成していることと、亜熱帯の定点では硝化とともに硝化脱窒によってもN2Oが生成していることが示唆された。 また、平成24年度に構築した海洋生態系・同位体分子種モデルを同定点に適用したシミュレーション結果は、平成24年度の観測結果と同様に平成25年度の観測結果も再現することができた。 またさらに、平成24年度に同モデルを用いて示唆した、「アンモニア酸化古細菌による硝化」の可能性を裏付ける観測結果が、共同研究者によって得られたことから、海洋生態系・同位体分子種モデルを用いた西部北太平洋のN2O生成過程の解析結果をまとめ、国内外の学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成25年度の研究実施計画を、ほぼ計画通りに実施することができたため、今年度は「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。 具体的には、2013年7月に行われた海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」における研究航海に参加し、予定通り2つの定点における海水サンプルを採取し、平成25年度中に測定も完了した。 また、N2Oアイソトポマーモデルの構築と定点へのモデルの適用・解析も予定通り終了し、国内・国外学会においてその結果を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は引き続き定点観測及び測定を行うとともに、平成25年度に完成した海洋生態系・同位体分子種モデルを、鉛直一次元モデルへ拡張し、西部北太平洋におけるN2O生成過程の鉛直方向の違いについて解析する。 また、海洋地球研究船「みらい」の2014年7月に行われる予定の西部北太平洋の航海に参加し、平成24・25年度と同様の定点にて海水を採取する。試料は持ち帰り、平成24・25年度と同様の方法で海水中のN2O濃度、同位体分子種比、NO3の窒素同位体比を測定する。 得られた測定値と鉛直一次元モデル値の比較を行うとともに、各種感度実験を行い、鉛直一次元モデルを検証する。 完成した鉛直一次元モデルを用いて両定点におけるN2O生成過程の鉛直方向の違いについて考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
その他で予定していた硝酸同位体の依頼分析が、円高の影響で想定していた金額よりも安価であったため。 平成25年度に故障したアスピレーターの代替品の購入に使用する。
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